迷惑メール【ショートショート】

「宝くじ当選!詳細は口座情報を返信してください!」


明らかな迷惑メールだったが、タカオは鼻で笑った。

「アホか、こんなん誰が引っかかるんだよ」


そう言いながら、タンスの奥に眠っていた放置口座の番号を返信する。

退屈しのぎの軽い遊びのつもりだった。


翌日、スマホの通知音が鳴る。

なんとなく銀行アプリを開いたタカオは、画面に釘付けになった。


「残高:128,537,210円」


「……は?」

しばらく固まる。数字が頭に入ってこない。

もう一度、目をこすりながら画面を見た。


「……ちょっと待て、どういうことだよ!?」


・スマホを投げ出しそうになる。

・手汗が止まらない。

・鼓動がやたら早い。

「これ絶対なんかの罠だろ!詐欺師が俺をハメようとしてるに決まってる!」


タカオはパニックになり、即決した。

全額を町内会の祭り資金として匿名で寄付することに。


「これで俺の口座は空っぽだ!誰も俺を追えない!完璧!」


数日後――


ニュース番組の特集で、司会者が満面の笑みで報じていた。


「詐欺グループの資金が行方不明となり、なんと町内祭りに寄付される事態が!

今年の祭りは過去最大の規模で開催されています!」


その画面には、派手な花火が打ち上がり、ライトアップされた神輿が輝く町の姿が映っていた。


タカオは祭りの屋台で焼き鳥を食べながら、祭りの賑わいを眺めていた。

ため息をついて、ぽつりと呟く。


「……俺、詐欺グループのボスって疑われないよな?」

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