第40話 ルミナとメイベル(5)
時は流れ、ファランとライラが卒業する日が来た。
「おめでとうございます」
「おめでとう!」
卒業式を終え、四人は枯れ木亭に集った。卒業祝いの宴会である。収穫の中からそれなりに蓄えていた資金のお陰で、まあまあしっかりとした宴会を開くことが出来た。
「ありがとう」
ライラが酒の入ったグラスを手に礼を言った。
「しかし、これからどうするかな」
早速一杯目を空にしたファランがグラスを置いて言った。
「俺らがいなくなった後もトレジャーハンター研究会は継いでくれるか?」
「もちろん! でも、あたしはまだ皆で冒険したいな」
「俺たちもそうしたいが、さすがに、今までと同じようにはいかないだろうな」
パーティーが保有する多くの道具や資産はトレジャーハンター研究会の所有だ。拠点が学院内にあると、どうしても卒業生との共用が難しい。
それだけならば外部に拠点を用意して必要な道具類を買い直せばいいのだが、問題は使える時間の違いだ。
単位取得のために学業も進めなければいけない在校生側と生活のために活動しなければいけない卒業生側では、どうしてもズレが生まれる。
「……わたしは、学院を辞めてもいいですよ」
ルミナが言うと、全員が注目した。
「おいおい」
「さすがにそれは」
ファランとライラが制止するも、メイベルがルミナの発言に続いた。
「いいね。あたしも辞めよっかな」
「待て待て、ちょっと待て。落ち着いてよく考えろ」
「そうよ。もっと自分たちの将来を考えて」
「けど、先輩たちは専業でトレジャーハンターになるんですよね」
ルミナの指摘に、ファランが押され気味に呟いた。
「まあな……」
「じゃあ、今わたしたちが中退してトレジャーハンターになっても大差ありません。トレジャーハンターに学歴なんて意味ないですし、四人での連携だってとれるようになってきたんだから、いま離れるのは勿体ないと思うんです!」
「そうだそうだ!」
ファランとライラは、今度は話を遮らず真剣に耳を傾けてくれていた。
ルミナは落ち着いた口調で自分の本心を探りながら説明した。
「それに、わたしはこのまま学院を出てやりたいこともありません。なんなら、普通に卒業してもトレジャーハンターを目指すでしょう。それなら、今一緒に学院を出て、一緒に冒険したいです」
元々、トレジャーハンターから距離を取らせるため、祖父によって勧められた魔術学院への進学だ。そこでルミナがトレジャーハンターの魅力に出会ったのは祖父にとって酷い皮肉としか言いようがないが、自分で初めて見つけた生き方である。手放すつもりはなかった。
「……分かった」
ファランが言った。
「そこまで言うなら、一緒にやろう。メイベルも同じなんだな?」
「もちろん!」
「まったく……呆れた子たちね」
ライラは苦笑いしていたが、どうやら認めてくれたらしい。
ファランの顔も綻んでおり、本心では嬉しかったのだということがよく伝わってきた。
「じゃあ、この宴会は俺たちの卒業祝い兼、新パーティーの結成祝いに変更だな。おおい、セラ! 酒の追加頼む! 料理もだ!」
宴会は遅くまで続き、改めて仲間となった四人は楽しい時を過ごした。
専業トレジャーハンターとなったルミナたち四人は順調に実績を重ね続けた。時間の確保に融通が利くようになり、探索の効率は向上。実力もメキメキと上がっていった。
そしてついに、パーティー結成以来、最大の挑戦を迎えることになった。
南本島で最難関と言われる遺跡、廃都市ガラキャム。多くトレジャーハンターが挑み、多くが無事には帰ってこなかったという恐るべき土地。
抜きんでた実力をもったルミナたちのパーティーは、満を持してそこに挑んだ。そして――
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