第39話 2人きりとは言われてないけどさぁ
そりゃそうだろって話ではあるけどさ。なんて事は無い、2人きりでは無かったというオチだ。
篠原さんのお誘いは、
そのチケットを貰ったから使いに来たと言うだけ。そしてそのチケットは4人分あったのだ。
「君が
「え、ええ。
「今日は宜しくね、東君」
篠原さんの隣に住む女子大生、
こんな人が美羽市にも居るんだな。てかこの4人組、俺だけビジュアル面で足引っ張ってないか?
オシャレな女子大生にイケメン彼氏、私生活は残念だけど超美人な大人の女性。俺だけがむしろ異物じゃないか?
良いのか俺がここに居て。場違い感が凄いと思うんだけど。しかも俺だけ未成年だしさ。何かこう、俺だけついでに連れて来られた弟みたいじゃない?
「葉山君も咲人君と同じ高校の出身だから、色々相談すると良いさ」
「は、はぁ」
「スポーツなら任せてくれ! 勉強は……鏡花に聞いてくれ」
とまあそんな感じで和やかなスタートを切ったわけだが、葉山さんは気さくで優しい人だった。気配りが上手いというのかな。
恋人の宮沢さんに対しては当然として、全員へ常に気を遣っている感じだ。しかもそこに意図が無いというか、わざとらしく無いんだよ。
自然とそうしているのが見ていて分かった。この人は凄いモテるんだろうな。篠原さんが連れて来ただけあるよ。
きっと篠原さんの周りに居るのは、こんな男性ばかりなのだろう。俺みたいな普通の高校生とは違って。
そりゃあ俺なんか男性扱いされなくて当然だよな。今更分かっていた事で凹む様な事ではないけど、何となく微妙な気分になりながらも水着に着替える。
そして葉山さんと男子更衣室を出て篠原さん達を待つ。暫くすると宮沢さんが先に出て来た。
「あ、あの……どうかな真? 変じゃない?」
「良く似合っているよ。今年の水着姿も可愛いな」
宮沢さんはあまり露出がないタイプの水着を着ていた。長めのパレオにオフショルダーの袖があるタイプだ。
あんまり人の彼女をジロジロ見るものではないか。それにしても流れる様に褒めたな葉山さん。これがデキる男なのか?
まるで少女漫画に出て来るイケメンキャラみたいにキラキラ輝いて見える。こんな風に俺もなれるだろうか。
あ……と言うかこの状況だと、俺が篠原さんの水着姿を褒めねばならないのでは? とか考えてるうちに出て来た篠原さんは………………めちゃくちゃ綺麗だった。
以前は水着姿なら耐えらるとか考えていたが撤回する。真っ赤なビキニが、篠原さんの真白な肌を際立たせている。
細くてスタイルが良いものだから、物凄い破壊力だ。特に腰のくびれが非常にセクシーである。
「ん? 咲人君どうかしたかい?」
「…………いや、その、綺麗だなって」
「ははは! 葉山君の真似かな? でもありがとう」
まだ宮沢さんの水着姿を葉山さんがベタ褒めしていたので、俺が真似をしようとしたと思われたらしい。
そうだけどそうじゃなくて、真似といえば真似なんだけどさ。俺が本当にそう思ったから言っただけだ。
葉山さんみたいに女性慣れも語彙力もないからこうなっただけで。大体篠原さんは自分をおばさんって言うけど何処がだよ。
こんなに魅力に溢れているのに、おばさんは有り得ないだろ。俺があと15年早く生まれていたら、そんな事を考えてしまうぐらいだ。
それだけ心に響いたのは間違いない。俺に恋愛が出来るかは兎も角として、好みかと聞かれたら絶対に首を縦に振る。
「2人とも良い雰囲気だし、暫く2人にさせてあげようか」
「そ、そうですね」
「鏡花ちゃん、私は咲人君と場所取りをしてくるね」
「あ、はい!」
プレオープンとは言っても、結構な人数の来場者が居た。物凄い混雑ではないけど、それなりの密度がある。
今の内に良い場所を取っておきたいのは間違いない。しかし同時に篠原さんと2人きりは中々の緊張感だ。
今更何をという話ではある。あるけど、こんな水着姿の美人と一緒なんだぞ。公の場とは言え、この状況で緊張するなというのは無理だ。
どうにかして普段の残念な姿を、脳内で重ねて帳消しにしないと落ち着かない。さあ飲むぞとか言い出して、ビールを飲み始めてくれないかな。
そうしたらギリギリ何とかなりそうなんだけど。などという俺の願いは叶わない。
「この辺りが良さそうだね」
「あっ、はい」
「レジャーシートを敷くから手伝ってくれるかい?」
目のやり場に困るというのはこの事を言うのだろう。普段から分かっていた事だが、篠原さんはスタイルが良い。
つまり胸も結構なモノをお持ちだ。屈んだりするとその魅惑的な谷間が嫌でも目に入る。ちょっとした動作で、その豊かな丘が揺れている。
思春期男子のスケベ心が湧き上がろうとしてくる。だがそんな目を向けてはいけないと、鋼の精神で耐える。
恋人でもないのに、水着姿を見られただけで十分幸運なのだ。これ以上を望んではいけない。
あくまでも冷静に、冷静に…………過ごせるのか? まだお昼にもなっていないと言うのに。
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