第31話 調理実習で嘘つく奴って何がしたい?
期末テストや夏休みと言うビッグイベントの前に、ちょっとしたミニイベントがある。それは家庭科の調理実習だ。
今回作るのは昼食のメインとなるハンバーグと、サイドメニューとしてのシンプルなサラダだ。
俺からすれば大した事のないメニューだけど、料理経験がない人達には少々難しいだろう。
家庭科の先生もそれを分かっているからか、予め料理経験の有無を確認している。その経験者を中心に、先生が決めた班分けで行動する。
今回俺は
残りは女子生徒で、高い身長が特徴の美人、女子バレー部の
そして俺と同じ陸上部所属で人気者、
「
「お前に任せた!」
「いやお前らも料理するんだからな?」
俺と一緒で助かったのはサボる為じゃないだろうな? 最初から任せる気満々の陽介は論外として、雄也もしっかり作業はしてもらうからな。
挽き肉を捏ねたりするのは意外と疲れるし、男手はそっちに割くつもりだ。テキパキと仕事をしてもらうからな。
流石に俺も1人で6人分は作りたくない。出来なくはないけど、まあまあな労力だからな。
「
「う〜ん、じゃあ霜月さんはサラダ担当かな」
「私は少しなら出来るよ」
「なら澤井さんはハンバーグ担当で」
班内の割り振りを決めて調理を開始する。料理の経験がある俺と澤井さんに増田さんがハンバーグを。
陽介と雄也は雑用と、霜月さんと共にサラダを担当して貰う。先ずは玉ねぎ等の具材のカットを澤井さんと増田さんにお願いする。
料理が出来ないと言っていたわりに、霜月さんは綺麗にミニトマトを切っている。陽介と雄也はレタスを千切っていた。
ある程度材料が揃う前に、俺は先にサラダに入れる茹で卵を作り始める。わりと良い感じにスタートを切れたのではないだろうか。
「おい咲人! 助けてくれ!」
「一哉? どうしたんだ?」
「
「はぁ……そのパターンか」
高校でも居るのかよそのタイプ。女子に料理が出来るとアピールをしようとして、嘘の申告をする奴は何がしたいんだ。
どうせこうして簡単にバレると言うのに。そもそもそんなやり方でモテるわけが無いだろう。
その大戦犯でクラスメイトの石田と言う男子生徒は、家庭科の先生にしっかりと怒られていた。
石田はあんまり接点の無い生徒だったが、その手のタイプだったか。まあ確かに軽薄そうな印象があるし、これぐらいやっても不思議ではない。
「東君、どうしたら良いの?」
「
「野菜を切るぐらいなら」
「じゃあ玉ねぎをみじん切りにしておいて」
水泳部所属の小柄で可愛いと人気の倉田さんにはハンバーグの用意を、一哉にはサラダに使う野菜を洗う様に指示を出す。
一哉と同じ班に所属していた、派手なギャルタイプの
残る2人はあまり話した事の無い生徒だったけど、とりあえず出来そうな事をお願いして一旦自分の班へと戻る。
調理実習に使うだけあり家庭科室は結構広い。全部で6つある調理実習用の机は、3つずつ横並びに設置されておりそれが前後2列ある。
俺達と一哉達の班は、ちょうど端と端だった為に移動が面倒だ。せめて隣の班ならもう少し楽だったのに。
「お前も大変だな」
「そう思うなら頑張ってくれよ陽介?」
「おいおい、俺は食べる専門だぞ。期待するなよ」
自分の班と一哉達の班を行き来しながら進めていたら、説教が終わったらしい家庭科の先生が一哉達の班を見る事になった。
漸く自分の班に戻って来た俺は、調理の続きを始める。既に挽き肉を具材と混ぜる段階に来ていたので、男子3人で挽き肉を混ぜる事にした。
少々予定が狂ってしまったが仕方ない。俺が茹でていた卵は澤井さんが処理してくれており、サラダの方は何とか完成まで行きそうだ。
逆に俺が2班見ていたせいで、ハンバーグの調理が遅れている。少々急がないといけないか。
「雄也、もう少し丁寧にやってくれ」
「俺こう言うの苦手なんだよ」
「満遍なく混ぜるだけで良いから」
何とか皆で協力しながら、遅れを取り戻す事が出来た。このペースなら時間内に全てを終わらせられそうだ。
一哉達の班も、先生が参加した事で何とかなりそうな様子だ。本命のハンバーグを後は焼き上げるだけ。
形が崩れない様に注意しつつ仕上げていく。少々トラブルはあったけど、まあ悪くない出来上がりになったかな。
欲を言えばもう少し、ハンバーグソースに拘りたかったが仕方ない。ケチャップとウスターソースを混ぜただけの即席で済ませる。
「東君、本当に料理上手いね」
「今回はちょい手抜きだから、そうでもないでしょ?」
「十分じゃない? 凄く美味しそうだけど」
澤井さんがそう思ってくれるのは嬉しいけど、俺としては不完全燃焼なんだよな。完成を急いだ結果ハンバーグのタネもソースも手間を省いている。
何かちょっと嫌だし、今夜の
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