第29話 園田マリアの雑談配信②
「いぇーい!! 皆こんばんわ〜〜!!」
『うるさっ』
『開幕爆音やめろ』
『鼓膜ないなった』
『
『テンションくそ高くてビビる』
Vtuber
彼女は貯まっていた仕事を終わらせて、深夜0時から配信を開始した。なぜ深夜にも関わらず、彼女がこんなにうるさ……元気かと言えば
仕事をこなしながら配信を観ていた美佳子は、咲人の活躍を大いに喜んだ。やるべき事を終わらせたら酒盛りを開始し、今に至ったと言うわけだ。
「いやーおめでたい事があったからさ。ごめんごめん」
『おめでた?』
『いやないだろ』
『それはない』
『どこに反応してんだよw』
『ここに来るのは初めてか?』
「あ、知り合いの話ね。ボクの話じゃないよ」
咲人が所属する
全国の舞台へと羽ばたいて行く咲人の事を、美佳子は自分の事の様に喜んでいた。最近ちょっと仲良くなり始めた、歳の離れた男の子。
その輝かしい活躍を誇らしく思っている。実際咲人は十分な活躍を見せ、しっかりと順位上昇に貢献していた。1年生としては十分過ぎる結果を残している。
「知り合いの子がさ〜駅伝出るんだよ、全国区のやつ」
『マ?』
『すげーやん』
『誰か知らんけどおめでとう』
『全国は普通に凄い』
『元陸上部の俺が来ましたよと』
「そうでしょ〜! 凄いよね〜!」
我が事の様に喜ぶ美佳子は、非常に機嫌が良かった。風邪で休んだ分の仕事に追われていたが、その疲れも吹き飛んでいた。
なぜそこまで嬉しいと感じたのか、彼女自身良く分かっていない。知人の成功や活躍を祝うのは、美佳子にとって当たり前だ。
それを口実に酒盛りをするのもいつも通りだ。しかしそれが、いつも以上に喜んでいるという自覚は無かった。
酒に酔った故か、それ以外にも理由があるのか。それはもう十分な量のアルコールを摂取した後なので、今となっては彼女にも分からない。
『¥500 お祝いです! マリア的に陸上部の男子ってどうなんですか?』
「お祝いありがと〜! 陸上部の子か〜ボクは結構カッコイイと思うな」
『はい! 元陸上部です!』
『でもどうせ女子はサッカー部かバスケ部に行くんだよ』
『バレーとテニスもあるぞ』
『剣道部ワイ、低みの見物』
『卓球部に光を……』
「えぇ〜別にサッカーかバスケばっかりじゃないでしょ」
モテる部活と言うのは、大体いつの時代も変わらない。サッカー部やバスケ部、野球部辺りはモテるタイプが多い。
バレー部は高身長な生徒が集まりがちなので、背の高い男性が好きなタイプの女子生徒から人気がある。
テニスはその爽やかなイメージからか、不動のポジションを維持している。しかし所属している部活で、人としての価値が決まる事はない。
だが傾向として、モテる部活と言うのは大体どこの学校でも共通している。最近ではダンス部なんかも候補になるだろうか。
「部活の種類じゃないんだよ〜頑張ってる姿が良いんだよ」
『わかる』
『ずっと見てたい』
『先輩にタオル渡すとか夢あるよね』
『女子率が上がって参りました』
『実際マリアはどうやったん?』
「ボクの交際経験って事? ん〜〜サッカー部でしょ、バスケ部とバレー部と〜」
『はい解散』
『全部Tier高いので草』
『ほら! こうなるんですよ!』
『結局爽やかイケメンってこと』
『別れた彼女がテニス部のイケメンと付き合ってました』
一般的には体育会系の方がモテるイメージがあるのは確かだ。球技大会や体育祭など、校内のイベントで目立つ機会が多いと言うのはある。
ただ実際にはそれが全てではない。合唱部や吹奏楽部、演劇部など女子率が高い部活でも恋愛は発生する。
ただ話題の中心にはなり難いだけで。意外と色んな部活で男女の恋愛は繰り広げられている。
違いが出るのは華やかなイメージのある部活が話題になり易い事と、シンプルに人数の差もある。
別にサッカー部やバスケ部に居たら、誰でもモテるわけではない。単に生徒が多い部活ほど、モテる生徒の所属率も高くなるというだけだ。
「ほら〜すぐそうやって卑屈になるから彼女が出来ないんだよ?」
『は?』
『正論パンチやめろ』
『ど、童貞ちゃうわ!』
『あ?』
『謝って?』
「ごめんって〜怒んないでよね〜」
いつもよりハイテンションな美佳子による雑談は続いていく。咲人のお祝いも兼ねているが、あくまで雑談配信だ。
それ以外の話題も要所で挟まれていく。実はこの配信を咲人も観ていた。最近はちょくちょく園田マリアとしての美佳子の日々を確認する様になった。
単純に会話がよりスムーズになるからと言う理由が大きいが、目的はそれだけではない。美佳子が大体どれぐらい飲んで、どの程度散らかしたか分かるからだ。
咲人は今、相当飲んでいるらしい美佳子の様子を観て頭を抱えていた。祝ってくれたのは嬉しくても、部屋の惨状を想像するだけで悲しくなった。
プラスがあればマイナスも必ずついて来る。それが園田マリアであり、篠原美佳子だった。
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