第16話 園田マリアのゲーム配信①

 園田そのだマリアの配信は様々な形を取っている。雑談の時もあれば、リスナー参加型の配信もある。歌枠もあればゲーム配信もやっている。

 今回は人気アクションゲームの配信が行われていた。10年以上続くアクションゲームの金字塔であり、狩猟生活をゲームにした作品の最新作だ。

 新作を期待されていた中での発売となり、色んな配信者が連日配信している。ゲームのタイトルは『モンスター狩人7 極みバースト』。

 ナンバリングタイトルは数年ぶりであり、外伝作品ではない最新作なので人気は爆発中だった。

 ソロから最大4人協力プレイが可能であり、本日の配信は視聴者参加型だ。マリア1人と、リスナーから3人が参加してパーティーを組んでいる。


「今回は何で行こうかな〜バスターランチャーにしようかな〜」


『今回バスランくそ難しいぞ』

『でも気持ちいいんだよな』

『分かる』

『フルチャージはロマン』

『っぱ大艦巨砲主義なんよ』


 モン狩と言う略称で呼ばれるこのシリーズは、中世ヨーロッパ風の世界観をしている。しかしそのわりには、使える武装は近未来的な物が多い。

 そして服装はやたらと和風である。和洋折衷のカオスさがまた、人気を博している理由の1つだった。

 大自然の中で巨大なモンスターを相手に、ビーム砲を撃てるのはこのゲームの売りである。近接武器と射撃武器の2種類があり、武器によっては盾もついている。

 今マリアが選択したバスランことバスターランチャーは、鈍重な代わりに最高クラスの火力を誇る脳筋武器だ。

 火力特化故に攻撃モーションが遅く、盾もついていない。如何に回避で凌いでみせるかが鍵だ。


「よーし、そろそろ出発するよ〜」


『wktk』

『wktkとかジジイおる?』

『君は何故知っているんだい?』

『間抜けは見つかったようだな』

『本日のインターネット老人会』


 大型モンスター討伐のクエストがスタートし、画面が拠点から大森林のスタート地点へと変わる。

 今作からはスチームパンク風のバイクが搭乗可能になっている。各種パーツをカスタマイズし、自分好みの見た目や性能にする事が出来る。

 ゲームの進化により、広大になったマップを移動する為の大切な乗り物だ。バイクに乗ったまま戦闘も可能だが、耐久値があるので油断は禁物。

 一定以上のダメージを受けると走行不能になる。動きが鈍重なバスターランチャーの様な武器には必須アイテムである。

 今作はこのバイク操作が中々難しく、動きの遅い武器種の難易度を上げている要因であった。


「皆、回復持った〜? じゃあ行くぞ〜!」


『ギャレオンは遅いから余裕』

『今作からは強くなってんだよなぁ』

『急にギュインと来るんよ』

『あのモーション考えた社員の給料カットしろ』

『1人で3乙した俺が来ましたよと』


 今回のクエストは大森林ステージの登竜門。初心者最初の壁と言われている大型モンスター、ギャレオンの討伐が目的である。

 硬い鱗にゴツゴツした手足、立派な角が生えた厳つい頭。移動速度はそれほど速くないが、今作から高速で接近するステップ移動等が追加されている。

 過去作ではデカいだけの雑魚と言われていたが、今作ではかなり強化されている。序盤にここでゲームオーバーになり、驚愕したプレイヤーも少なくはない。

 発売して間もないが、既に攻略動画や検証動画が複数アップロードされている。それ故、比較的に盛り上がり易いクエストだった。


「バイク難しくない? あっ、ちょっと!?」


『大事故で草』

『てかバグってない?』

『浮いとるやんけ』

『www』

『開幕3分でバグる女』


「降りれないんだけど!? 誰か助けて!?」


 崖に突っ込み落下したかと思えば、マリアの操る可愛らしい女性のアバターが空中に浮かんでいた。

 変な当たり判定に引っ掛かるのは有りがちなバグだが、クエスト開始早々に引き当てたのは配信者的に正解である。

 中々に良い絵が撮れた所で、助けに来た味方の爆弾によりふっ飛ばされて地上に戻る事が出来た。

 最初のダメージがモンスターの攻撃によるものではなく、味方によるバグから救出目的のフレンドリーファイアとなった。

 何とも締まらないスタートとなったが、リスナーには受けているので問題はない。


「最初ぐらいさ〜カッコよくやらせてよ~もう〜!」


『流石マリアだ』

『オチから始まる配信者の鑑』

『よう引き当てたな』

『今のバグ何かに使えないかな?』

『狙ってやれないんじゃね?』


 その後も色々とハプニングに見舞われながらも、無事に対象の大型モンスターの討伐に成功した。

 それからも順調にゲームを進めて行き、初心者用装備からワンランク上の装備に更新する事が出来た。

 まだまだ序盤であり、むしろここからが本番である。俺達の冒険はここからだ! と言う所で配信が終わる時間が近付いて来た。

 キリの良い所でゲームを終了させたマリアは、エンディングトークを始める。リスナーへのお礼や、ゲームの感想を述べて締めに入る。


「また新しい打ち合わせをして来たからね〜そのうちまた告知だすね」


『今度はなんだ?』

『また遊園地か?』

『あそこ結構おもろいよな』

『良いんだけど遠いのよ』

『新しいグッズでも良いぞ』


「それじゃあ皆ありがとう〜! おやすみ〜!」


 園田マリアのゲーム配信は終了した。人気アクションゲームの配信ともあり、中々に盛況であった。

 マリアとしての配信はこれで終わりだが、中の人である篠原美佳子しのはらみかこの仕事はまだ終わっていない。

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