第4話 私は幼少期、迷宮で強くなりました

「マリア。シュリル家の娘とし産まれたからには先ず、何を身に付けなければいけないと思いますか?」


「はい。お母様。礼儀作法、テーブルマナー、文学等の教養に有りとあらゆる……」


「違います。マリア」


バシンッ!


「……お母様?」


「シュリル家に産まれたのならば、先ず身に付けなければいけないもの、それは無類の強さです」


「……お母様? どうされました? いつもの……」


「それでは、マリア。今から貴女を南の〖カリオス迷宮〗を連れていき、放り込みます」


「……お母様? どうされました? いつもお優しいお母様がそんな事を言うわけが……」



〖カリオス迷宮〗


「始めの三日分の食料はこの袋に入れて起きました。武器は現地で調達してください。宝箱を開ければ見つかりますからね」


 お母様はそう言うと、小さかった私に鞄を背負わせてくれました。


「……お母様。ここは……いったい?」


ギイィィ……


「それでは頑張って生き抜き抜くのですよ。二年後位に迎えに来ます。真の強さを手に入れなさい。マリア…」


「ま、待って下さい! お母様! そんな! これのどこがシュリル家の娘に必要なの何ですか?」


……ガコンッ!


「そんな……扉が……しまって、しかも、ここはマキナ公国で最も危険な〖カリオス迷宮〗」


「フシュルル!」「キルルル!」「アハハハハ!!」「シュルルル!」「イヒヒヒヒ!」


「……こんな場所で二年以上過ごすなんて、冗談ですよね? お母様……天魔獣があんなに……〖ルース〗!!」



?年後


ギイィィ……ガコンッ!


「……生きていますか? マリア」


「はい……お母様。カリオス迷宮の天魔獣は手懐け、攻略も致しました。そして、これがこのカリオス迷宮で私が集めた。魔機や魔具(ミーティア)と財宝です……どうぞ」


 私はそう言うと収納の魔具(ミーティア)から、とてつもない量の魔機や魔具(ミーティア)を取り出しました。


「これは素晴らしい……マリア。その魔機や魔具(ミーティア)は貴女の物ですよ」


「私の物ですか? でも、これはシュリル家の財産に」


「自らが使う財は自ら作れ、シュリル家の家訓の一つです。そして、カリオス迷宮で手に入れた、その財は貴女、自身の者ですよ。さぁ、帰りましょう。マリア」


「帰る? 宜しいのですか? お母様。私はまだ、完全に強くてなれていませんわ」


「……後ろに見えるカリオス迷宮の迷宮主を倒しておいて、良く言いますよ。十分です。貴女は強くなりました。これからは淑女のマナーを覚えて頂きます……頑張りましたね。マリア」


 お母様はそう言って、数年振りに私の頭を優しく撫でてくれました。


「……お母様……私は……あれ?……目から涙が出てきました……私、私は……ちゃんとお母様に言われた通り強くなって……生き残りました……アァァァ」


 それから、私はお母様に抱き付き、泣きじゃくりました。後にお母様から聞いたお話では、シュリル家の子供は五歳の年齢と共に、迷宮に放り込まれ、数年間を迷宮内で過ごすらしいです。


 そして、私は〖魔機世(マキナ)〗の世界でも、危険度が高いとされるカリオス迷宮で過ごし、生き残りました。その結果、得たものが絶対的な強さでした。



〖ウルの森〗


パキンッ!


「がぁ?……こ、こんな事があぁぁ!!」


「……まだ、決闘を行いますか? サーシャ・アーノルドさん」


「何事ですか? マリアさん。アイナさん。何かありま……マリアさんが……剣を持っている?」

「何やってんだ! サーシャ! マリーに喧嘩なんか仕掛けたら、ボコボコにやり返されるぞ……てっ、手遅れだったか」


 私とサーシャ・アーノルドの決闘が、大騒ぎになってしまたのか、だんだんと人が集まって来ました。 

 そして、リク先生とロロギアさんがやって来てくれて、私の今の姿を見て、恐怖の表情を浮かべていました。



◇◇◇


「ガアァァア! 私の鎧と両腕があぁああ!」


「だ、誰か! 医者だ! 医者を呼んでこい! それと」

「副騎士団長、お静にして下さい。怪我はそれ程、酷くありませんので、落ち着いて下さい」


「これが落ち着いていられるかぁぁ! 私の両腕が外されているんだぞ。何とかしろおぉお!」


「……あー、うるせぇ、奴だな。だから、成り上がり貴族を機天騎士団に入れるなんて、俺は反対したんだよ」


 ロロギアさんが泣き叫ぶ。サーシャ・アーノルドさんを私達の近くで見ています。


「……剣、持っちゃいましたか。マリアさん」


「はい。持っちゃいました。サーシャ・アーノルドさんに決闘を挑まれたので、つい」


「そうですか……因みにマリアさん。今は剣の修行はしているんですか? 仕事が終わったら疲れて寝てしまうとかは?」


「いえ、毎晩、機能を停止する前に軽く振るってはいます。」


「そうですか……衰えたりとかしましたか?」


「いいえ、日々、上達しておりますわ。リク先生」


「……そうですか。成る程。僕も頑張らないといけませんね。成る程……」


 リク先生が遠い目で〖ウルの森〗の草木をジーッと見つめ始めました。


「齢五歳でカリオス迷宮を攻略した。シュリル家のご令嬢に決闘を挑むかね普通……マリーってロロより強いのにねぇ」


「本当だよ。しかも昔より強くなってんだよ。そして、その結果があの泣き散らしだろうが、あぁー、上にどう報告すりゃあ、良いんだ! また、ドヤされちまう!!」


 とっ、ロロギアさんは頭を抱えながら叫んでいました。


「リク先生。ロロギアさんが発狂してますが、どうなされたのでしょうか?」


「そうですね。この後、〖ハーピストの渓谷〗に入ったらどうなるのでしょうね。僕は少し心配になって来ましたよ。マリアさん」


 リク先生はそう言って、私が持っていた剣を静かに取り上げたのでした。





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