《幻神鳥の元を訪ねて》 プロローグ

(貴女が帰還者の‥‥‥ですか)


(何で、私の名前を?‥‥貴女、その身体は‥‥まさか、ルルエラ様の‥‥)


(ご質問があります。私は元の人間へと戻れるでしょうか?)


(‥‥あの薬はもう持っていないの‥‥だから‥‥)


(‥‥に行くしかないのですか? でも確か、許可が下りなければ‥‥)


(‥‥そんな悲しそうにしないでくれる?‥‥私はそういうのに弱くて‥‥)


(万能薬に心当たりがあるのですか?)


(‥‥仕方ないからそこの‥‥と‥‥行く‥‥わ‥‥)



◇◇◇


〖政庁・記録院〗


「〖シルの森〗から〖ハーピストの渓谷〗へ行きたいですか‥‥無理ですね。マリアさんを危険な目に合わせられません。行くなら貴女だけで行って下さい。アイナさん」


「リク先生。そんな私が大切ですなんて‥‥嬉しいです」


「いや、リク君はそんな事、言ってないから、戻って来なさい。マリー、それと何でそんなに私に冷たいわけ? リク君は」


「僕やロロに相談もせずに勝手に決めて、政庁に許可を取ろうとしたから怒ってるだけですよ。アイナさん‥‥良いですか。安定期に入った〖シルの森〗までなら、まだしも準禁則地指定の〖ハーピストの渓谷〗に行こうなど、許可する事はできません」


「な! リク君はマリーがこのまま、人形のままで良いっていうの? 歌姫のアリアさんについては納得してるけどね。君やロロがもっと早く事件を解決していれば、アリアさんは壊れる事もなくて、〖ユグドラの万能薬〗も使わないで寸断じゃない? ねぇ?!応えて‥‥てっ! マリー、何で私の手を押さえるのよ」


「アイナさんが私の為に怒ってくれたり、涙を流してくれたのは凄く嬉しいです。でも、リク先生やロロさんもあの時、できる最善を尽くしてしいたんです。だから、リク先生を責めないであげて下さい。アイナさん」


 アイナさんは涙目になりながら、リク先生に詰めよった。私の為に‥‥涙まで流して。


「‥‥それについては僕も至らぬ所がかなりありました。謝りましょう。ですが〖ハーピストの渓谷〗は本当に危険な場所なのです‥‥せめて、ルルエラ神の加護と「機天(デウス)遣者(アポストルス)の誰かに動向頂けなければ、上層部からの許可すら下りな‥‥」


‥‥ギィィ‥‥カラン‥‥カラン‥‥

「ニャーオン! はい。許可取ってきたよ」

「何か〖浮遊機城(クレピタークル厶)〗から暫く休むように通達されて、ルナと〖記録院〗に行く様に言われたんだが、何か知ってるか? リク、マリー‥‥てっ、何でアイナがここに居るんだ?」


「‥‥ルナさんにロロ」

「何でここに?」


私とリク先生が突然の来訪者に困惑していると‥‥


「ニヒッ‥‥これで条件の半分はクリアしたわね。そして、もう半分は‥‥はい! リク君。パパから借りてきた(盗んだ)、〖天のルルエラ像〗。これで加護いけるっしょ?」


アイナさんが先日のオークションで出品されていた〖天のルルエラ像〗を持って、笑顔でリク先生に渡した。


「こ、これは‥‥本当のですか? まさかラテ亭主が落札していたとは‥‥」


「ではでは、出発の予定日が決まり次第。〖記録院〗〖開発課〗〖騎士隊〗で〖ハーピストの渓谷〗の調査隊って名目で、出掛けるわよ! やったーっ!ねぇー、マリー!」


「は、はい! ありがとうございます。アイナさん」


アイナさんは私の両手を握ると嬉しそうにダンスを踊りだしたのでした。

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