幕間・あの日の決断を手記に綴る


 キイィ‥‥ガチャ‥‥


「ニャーン!お帰り。ご主人様‥‥今日は随分と遅かったね」


「ただいま戻りました。ルナ、帰りが遅くなってしまってごめんなさい」


 いつも私が家に帰って、最初にルナとする会話はいつもこんな会話から始まる。


「今回はだいぶ、大事だったみたいだね? 〖エクシルス通り〗の猫界隈(かいわい)でも、かなり話題になってたよ」


「‥‥エクシルス通りにそんな界隈があるの? 初めて知ったのだけど?」


「そうそう。あるんだよ。そして、その界隈のネコボスがこのルナなんだよ。凄いでしょう? ご主人様‥‥てっ! 僕の話をちゃんと聞いているの? ご主人様」


「そうね。ルナは凄い子ね。でも少しの時間待っててもらえるかしら? この数日起きた事を〖手記〗に綴らなくちゃいけないの」


「! ニャ~、それなら仕方ないね。じゃあ、僕はご主人様の〖手記〗作業が終わるまで大人しくしているよ。ニャオ~ン‥‥」


「‥‥ありがとう。ルナ」


◇◇◇◇◇


 今回も色々な事がありました。


〖ユグドラの万能薬〗の捜索から始まった出来事。


 〖クリス商会〗〖歌姫アリア〗さん〖アルバ・シュトロノム〗さん〖リスリラ社〗。色々な人や者、組織が複雑に絡み合った。


 〖歌唱人形アリア〗を巡ってのリスリラ社によるオークション襲撃事件。


 最後はアルバ・シュトロノムさんの暴走で、歌姫アリアさんの人形の身体は壊れてしまいました。


 そして、今回のクリスさんの依頼報酬である〖ユグドラの万能薬〗を使用し、歌唱人形アリアさんの身体は修復され、アリアさんは人形から人へと元に戻る事ができたのでした。


 そのおかげでクリスさんとアリアさんは悲しいお別れをせずに済みました。


 私はあの時の判断が一番正しかったと信じます。それがお二人の幸せになれるなら‥‥


◇◇◇◇◇


「ニャーン。〖手記〗作業は終わったかい? ご主人様」


「えぇ、今、終わった所よ。ルナ」


「じゃあ、これ。はい、ご主人様宛の手紙だよ。アイナ・カンデラさんからの手紙~」


「アイナさんから?‥‥いったい何かしら?」


 私はルナが口に咥(くわ)えていた。手紙を受け取り開けてみる。


『オークション襲撃事件の話はロロから聞いたわ。マリー! パパをぶっ飛ばして、例の〖幻神鳥(ハーピィー)〗の居場所を突き止めたわ。行くわよ! 〖シルの森〗の更に先にある〖ハーピストの渓谷〗にね!』


「〖シルの森〗の更に先?‥‥〖ハーピストの渓谷〗ですか‥‥」




〖帰還者(ハーピィー)〗遭遇編 開幕

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る