第5話 貴方との日々の思い出を
背中には天使の様な翼。
長身で、良く鍛え抜かれた身体。
そして、街を歩けば、女性ならば必ず見惚れる顔立ちに金髪の髪色。
‥‥‥‥物語に出てくる様な王子様がそこに現れた。私は心の中でそう〖手記〗をした。
〖エクシルス通り〗
「随分と派手な登場でしたね。ロロ、城の仕事は良いのですか?確か君は〖シルの森〗の討伐隊の指揮を任されていた筈ですよね?政庁の方達は討伐は早くても数日はかかると話していましたが」
「ん?あぁ、もう終った。つうか一人で行って終わらせて来た。リクが珍しくエクシルスに来てるってラテ爺に聴いたんだ。〖カンの残滓(ざんし)〗て魔具(ミーティア)で、これを知り合い通しで共有してると意思が伝達し合うとかで、カンデラで高値をはたいて買ったんだぜ」
「なんと?下の世界の十の買い取り品の一つを買った騎士が貴方だったとは、ロロ。驚きです!それで?その〖カンの残滓(ざんし)〗はおいくらしたのですか?」
「‥‥‥‥二億ティアだ‥‥‥すげえだろう?一瞬で金が溶けたんだぜ。ビックリするよな?」
「‥‥‥バカなんですか?貴方は、相変わらずの希少な魔具(ミーティア)収集ですか?貴方、破産したいんですか?」
「しねえよ。これでも騎士の賃金は結構高いからな。だが今は金が無くて困ってたんだぜ、だからお前に会いたかったんだ。取って置きの情報をやるから金を貸してくれ!」
‥‥‥‥ロロギアさんが空から舞い降りた時は本物の天使の様な姿に見惚れていた。でも今は違う感情が渦巻いている。
「ウワァ~!冷めるはこの金髪色男騎士~、顔は良いのに勿体ない。ねぇ、マリー」
「はい。アイナさん。お金に緩い人は駄目だと思います。ロロさん。リク先生を見習って下さい」
「‥‥‥‥お前ら。〖イリヤス魔機学園〗の時はずっと馬鹿やっていた中だけどな。今のこの世界でも俺は七人の‥‥‥」
「はいはい、ロロ元学生君。静かにしてくれますか?僕達はこれから食事に行くので、邪魔をする様なら帰りなさい」
「あっ!リク!お前、自分は飛び級で先に卒業して、イリヤス魔機学園の教師に抜擢されたからって、何だ?それ、そもそも、お前も俺達とずっと一緒にだな‥‥‥てっ!痛っ!アイナ!何すんだ?」
「話が長いのよ。騎士・ロロギア様はっ!もう。そら、その邪魔な綺麗な羽は消しなさい。それとお金を借りるなら私が貸してあげるわよ」
「いや良い。そもそもアイナに借りたら、それこそ破産するわ」
「(ムカッ!) 何ですって?!居候の分際で何言ってるのよっ!バカロロ」
「事実を言ったまでだ。事実を」
アイナさんとロロギアさんのこのやり取り、何だか懐かしい。
イリヤス魔機学園に在学中は毎日、こんなやり取りがあった。
「‥‥‥‥懐かしいですね。マリアさん。あの頃は楽しかったものです。何もかもが」
あっ‥‥‥‥先生も私と同じ事を考えていたなんて、何だか恥ずかしい。
「ですね‥‥‥」
私はボソッとそう告げると赤面した顔を隠す様に、新しく買った洋服が入った袋で顔を隠した。
「ほれ、恵みのお金ぞ。受け取れ、英雄の騎士・ロロギア君」
「グォォォ!!!何でいつの間にアイナに金を借りる事になってんだ?そして、何でいつの間に俺は受け取ったんだ?!」
「さぁ?何でだろう?分かんない。それよりもこの後、どうせ暇でしょう?買い物付き合いなさい」
「何で俺が?いや、それよりも今はリクに情報を伝えないといけなかったな。忘れてたぜ」
「あっ!コラ、話を反らすな!」
「〖シルの森〗から急いで来たから腹減ったんだよ。リリクのレストランに行くんだろう?俺も行って良いか?リク、マリー、あの店に行けば久しぶりに学友五人が揃うチャンスだぜ!」
「奢ってほしいなら。素直にそう言いなさい。ロロ。まぁ、僕の為に情報を手に入れてたという事なので今日の食事は奢ってあげますよ」
「私も大丈夫です。ロロギアさん」
「マジか?!助かるぜ!ありがとうな!元学友達よ!」
「‥‥‥‥あー、何で先生とマリーはロロに甘いかなー、全く!」
アイナさんが頬を膨らませて少し不機嫌になっている。
ロロギアさん。〖浮遊機城(クレピタークル厶)〗の守護騎士にして、魔機界(マキナ)の最高職業(ジョブ)・〖機天使(リーク)〗を持つとても強い人。
だけど私達の前ではそんな凄い人とは思えない程に駄目な人で、魔具(ミーティア)収集趣味が原因で、アイナさんやリク先生にお金を借りる借金男でしかなかったり。
そして、イリヤス魔機学園の私、リク先生、アイナさんの元学友であの頃はいつも行動を共にしていた。
私達のロロギアさんの総評はお強くて、名声があって、素敵なお姿なのに中身が残念な人という事。
‥‥‥‥空から舞い降りた時のときめきを返してほしい。
◇◇◇◇◇
高級店〖空の飛行艇亭(リリクのレストラン)〗
ガチャ‥‥‥‥カラン!カラン!
〖エクシルス通り〗の最高層に一見のレストランが存在している。政庁の方々も頻繁に訪れると言われ。〖マキナ公国〗が誇る名店。空の飛行艇亭(リリクのレストラン)。内装は高級な造りになっていて、首都イリアスの街並みをその高層から眺められる立地とリリクシャルの一族が作る料理を求めて〖魔機界(マキナ)〗中からお客様が絶えないとリク先生は以前、言っていたのを思いだした。
「ハーイッ!いらっしゃいませ‥‥‥‥申し訳ありませんが当店は完全予約制で御座いまして、ご予約の無い方にはお帰り頂いておりまして」
「イラの元、我等は再び会うとしよ‥‥‥際空の個室で」
「‥‥‥‥はーい。畏まりました。四名様ですね。どうぞ。〖リリクの飛空艇〗最上階へ‥‥‥父さん!!リク達が食事に来たから、もう今日は上がって良い?」
「‥‥‥‥何?先生達が?なら、リリク。何品か作って上に持ってやれ‥‥‥何だマリアちゃんも一緒か」
「うん!後、ツケのロロギアも居るよ」
「〖魔浮石〗はあそこら辺の棚にあるから、それで鉄鋼ステーキと潤滑油(エール)のスープでも作れ、そして、ロロギア!!!この間、騎士団の連中と一緒に食いに来た時のツケ分。十万ティア払って帰れよ。分かったか!」
「‥‥‥もう。先に最上階に登ってたよ。父さん」
「あの借金馬鹿がああぁ!!!金払え!!!」
ドタドタドタドタ!!!!
「‥‥‥‥行っちゃったね。ロロ、父さんに殺されないと良いけどねぇ。ハハハ」
〖空の飛行艇亭(リリクのレストラン)副料理長クリス・リリクシャル(職業(ジョブ)・《万能者》〗
執事服を着た小柄で愛らしい姿。明るい茶髪に魔力を帯びた魔眼の瞳。庇護欲を引き立てられるこの方は、レイン・リリクシャルと言う人で。私達四人(一人逃亡中)と同じ、イリヤス魔機学園の元ご学友。因みに愛らしい姿とは言いましたが、クリスさんはれっきとした男の子です。
「いやー、久しぶりだねぇ。皆!会いたかったよーっ!卒業前にこの店に入る合言葉を教えといてあげて良かったよ」
「お久しぶりです。レインさん」
「昨日ぶり、レイン」
「二日振りですね。レイン君。今日はこの品々を所望させて頂きます」
‥‥‥‥ん?私はレインさんに会うのは数ヶ月振りなのに?昨日、二日振り?‥‥‥んんん??もしかして、リク先生とアイナさんはこの店の常連という事?
「うん。皆、久しぶりだね‥‥‥それと今日はこれとこれが食べたいと。了解。了ー解。じゃあ、先に最上階に上がってて、直ぐに作り終るからさぁ!!」
「了解です。ではお二人共に展望テラスへ先に行きましょう。借金男が待って居ますからね」
「はい。リク先生」
「‥‥‥あのバカロロ。此処でも借金してたのね。全く」
私達。三人は店の中にある古めかしい階段を上がった行く。すると途中から階段が自動で動き始めて、いつの間にかお店の最上階に着いていた。
そして、最上階で私達が見たものは‥‥‥‥
「お前の上司のガイルスに報告するぞ!!ロロギア!!良いか?」
「き、勘弁してくれ。レインの親父!!議会でまた怒られる!アンタ、息子の親友を見捨てるのか?」
「吐いて棄ててやるわ。なんなら今からこの展望テラスから棄ててやるか?」
「無理だぜ。レインの親父。俺にはこの美しい翼があるからな」
「喧しいわ!!このボケがあ!!」
ゴツンッ!
「ギャアアアアア!!!!痛えぇぇ!!何すんだ!親父!!」
「誰がお前の親父だっ!!バカやろう!!俺の息子は可愛いレインとランとサリーとアイシアとティアの五人だけだ。ボケエェ!!!」
ゴチンッ!
「ギャアアアアア!!!!子沢山過ぎるだろう!レインの親父!!」
ロロギアさんがレインさんのお父さんに説教されながら叩かれていました。
「空の英雄がボコボコにされています‥‥‥‥」
「オー!良いぞ!もっとやれーっ!」
「良い薬になりますね。ロロ」
「ん?おぉ!三人共、久しぶりだな。元気にしてたか?」
「えぇ、二日振りですね。リリクさん」
「私は昨日振り、昨日は美味しパテをありがとう。リリクさーん」
「お久しぶりです。リリクおじ様」
「おう!‥‥‥マリアちゃん。色々と大変だったみたいだな。暫く、顔を見なかったから心配事してたんだぞ。身体はもう大丈夫なのか?」
「そ、それはありがとうございます。リリクおじ様。お陰さまで今はリク先生の手記のお仕事をお手伝いさせて頂いてます」
「そうか‥‥‥‥それは良かったな。まぁ、此処でならマリアちゃんも食える料理を俺もレインも作れるからな楽しんでいけよ。ロロギア!!てめえは食事が終わったら、皿洗いだっ!少しでもツケの分を払っていけよ!!良いな!逃げるなよ!」
「‥‥‥了解だ。リリクシャルのオッサン。俺は絶対に逃げないぜ‥‥‥‥」
「‥‥‥当たり前だ。仮に逃げたとしてもガイルスにチクるからな。逃げ場は無いからな!良いな!」
リリクおじ様はそう告げると下のレストランへと戻って行った。
「‥‥‥‥しゃああ!!居なくなったかリリクシャルのオッサン!!もう怖くねえぞ!!」
「‥‥‥‥復活したわ。借金王が」
「ロロは頑丈ですから」
リク先生とアイナさんがロロギアさんを冷めた眼で見ている。その時、だったレイン君が大量の料理を抱えて、展望テラスにやって来たのは。
「皆ー、お待たせ!!待たせちゃったね。パーティー‥‥‥始めよっか!!」
「‥‥‥可愛い過ぎない?撮って良いかな?マリー」
「反則的な笑顔で、人だった頃なら鼻から血が出たと思います。アイナさん」
‥‥‥破壊力抜群の最高な笑顔を零きょりから受けて、私とアイナさんは倒れそうになりました。
◇◇◇◇◇
数十分後
「ほれ、頼まれてた〖アークス教団〗の情報の紙だ。リク。後、お代は入らねえからな。お前には前の貸しもあるしな」
「おぉ、それはありがたい‥‥‥随分と詳細な情報の手記ですが。かなり深い所まで探ったのではないですか?ロロ」
「昔からの学友達の為だからな。それよりもラテ爺から聞いた〖ユグドラの万能薬〗か?」
「えぇ、勿論ですよ。マリアさんを戻す為にもね」
「本当に探し出す気か?下の世界の魔具(ミーティア)何て何れも高値になる。今頃、貴族のオークションか冒険者ギルドにでも高値で取引されてる頃だぞ。俺の予想じゃあ、クリス商会が最後に競り落とすのが目に見えている。あの商会に取られたらもう表には出てこなくなるぞ」
「ですね‥‥‥政庁の特権で回収する事も考えましたが、それは今後、マリアさんと相談して決めていきますよ。〖帰還者〗を探すというてもあるとラテ亭主から聞けましたし」
「〖帰還者〗?あぁ、例の《幻神鳥(ハーピィー)》か‥‥‥確かにその手もあるな」
「〖ユグドラの万能薬〗〖帰還者〗〖アークス教団〗調べる事、探す事、記録する事が多いですが頑張りますよ。だって全ては‥‥‥‥」
「‥‥‥‥だな。リク‥‥‥マリーなら彼処で今、一人でイリアスの街を眺めてる。行ってやれよ‥‥‥俺はアイナとレインの相手をしてるから」
「ハハハ。流石はロロギア。僕の親友にして頼れる相棒だ‥‥‥ありがとう。少し、席を外します」
「おう‥‥‥‥行ってこい。相棒‥‥‥‥‥一緒に戻してやろうぜ。マリーをよう‥‥‥‥リク」
◇◇◇◇◇
「マリアさん。此処に今したか」
「‥‥‥‥リク先生。ロロギアさんとのお話はもう終わったんですか?何で此処に?」
「マリアさんが少し寂しそうな表情をしていたから気になったんですよ?何かありましたか?」
「‥‥‥はい。先生‥‥‥私、今日はアイナさんやロロギアさんにレインさん達と久しぶりに会えて嬉しかったです。この数ヶ月の間、新しく生活に慣れるだけでいっぱいいっぱいで‥‥‥心も身体も壊れそうでしたから」
「そうですね。あの時は僕も貴女を支えるので精一杯でしたね。ですが‥‥‥それを乗り越える事ができたのもマリアさんが強かったからです」
「私が強いですか?そんな事‥‥‥無いです。私はこんなに脆い人形ですから」
「いいえ。マリアさんは強いですよ。どんな人よりも心も身体も、ですから必ず取り戻しましょう。貴女の心臓を、貴女の肌を、貴女の身体を‥‥‥僕が必ず治して差し上げます‥‥‥〖記録者〗リク・テリクスの名に懸けてね」
「リク先生‥‥‥‥ではその〖記録〗する〖手記者〗も必要ですね。フフフ、じゃあ、私はその傍らでリク先生の〖記録〗を〖手記〗させて下さいね‥‥‥だって私は貴方の手記人形なんですから」
「えぇ、これからもよろしくお願いします。マリアさん‥‥‥」
「はい。喜んで、です。リク先生‥‥‥」
他愛もない日常の会話。
他愛も無い仕事終わりの日常。
元学友達との久しぶりの再会。
私とリク先生との全てを書く。
そう。私は〖呪いの人形〗事件で実律型人形(マギ・オートマター)の手記人形に変わり果てた〖手記者〗。
だから今日の思いでも〖記憶〗して〖記録〗して〖手記〗をする。
その〖思い出〗を、リク先生との思い出を想い描く。
だってそれが私、恋をする手記人形なのだから。
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