出会い
翌日。
ブリュンヒルドは、来客出迎えのため、ドレスに着替えていた。
今日は、隣国のヘルメス王国からマルセイユ子爵家が来る。
ブリュンヒルドは、専属メイドであるマリエラに聞く。
「ねえマリエラ。マルセイユ子爵家はどうして、我が家に来るの?」
「マルセイユ子爵家は、アルストロメリア家と昔から交流があるんです。マルセイユ子爵家は『剣』を象徴する、ヘルメス王国で最強の『ソードマスター』の家系なんですよ」
「ソードマスター……?」
「つまり、剣で最強の貴族。というわけです」
「へえ……」
「ふふ。お嬢様には、あまり縁のない世界でしょうね」
ふと、ブリュンヒルドは『処刑執行人』の仕事を思い浮かべ、昨日手入れをした剣を思いだす。
剣……もしかしたら、そういう繋がりなのか、と。
「はい、終わりました……まあまあ、なんと可愛らしい」
薄紫を基調とした、フリル付きのドレス。
腰まで伸びた銀髪も丁寧にまとめられ、翼を模した髪飾りで固定されている。
ブリュンヒルドは姿見の前でくるりと回るが……特に表情を変えない。
「ありがとう。じゃあ、お出迎えに行きましょうか」
マリエラと公爵家の玄関ホールに向かうと、兄エイル、妹シグルーン、そして母ヒルドル、父ライオスがすでに並んでいた。
ブリュンヒルドも列に加わると、ちょうど馬車が到着。
ドアが開き、ライオスと同世代の、どこか筋肉質な男が両手をガバッと広げた。
「ははは!! 久しぶりだなライオル!!」
「っ……お、おい」
なんと、男はガバッとライオスを抱きしめた。
背中をポンポン叩き、喜びに顔を染めている。
そして、ライオスから離れた途端に、貴族として一礼した。
「お久しぶりでございます、アルストロメリア公爵閣下」
「……遠路はるばるようこそ、マルセイユ子爵」
「ははっ、お前は変わらないな。ライオス」
「……ガムジン。家族もいるんだ、まったく」
ブリュンヒルドは驚いた。
寡黙で、どこか冷たさのある父が……懐かしさに頬を緩めている。
そして、ガムジンの目がブリュンヒルドに向く。
「……ほう、娘か。似ているな」
「はじめまして。ブリュンヒルド・アルストロメリアと申します」
カーテシーで一礼すると、ガムジンも一礼する。
そして、エイル、シグルーンにも挨拶をし、ヒルドルにも挨拶。
「久しいな、ヒルドル」
「ええ。全く、あなたはいつも豪快というか、粗暴というか」
「ははは!! 熊のような貴族と国内では笑われている。ああそうだ、紹介しないとな」
すると、いつの間にいたのか……少年がいた。
黒髪、青い瞳の少年は、ガムジンの隣に立ち一礼。
「はじめまして。カルセドニー・マルセイユと申します」
「オレの息子とは思えないほど礼儀正しいだろう? ははは、母親似ってわけだ」
「父上……」
「すまんすまん。さて、立ち話もなんだ、酒でも飲むか」
「……はあ、公務が先だ。エイル、ブリュンヒルド、シグルーン。カルセドニーを案内してやりなさい」
「「「はい」」」
ブリュンヒルドたちは一礼。
エイルがカルセドニーに手を差し出した。
「はじめまして。ぼくはエイル、こちらが妹のブリュンヒルドと、シグルーン」
「はじめまして。ブリュンヒルドと申します」
「はじめまして……」
カルセドニー、ブリュンヒルドは互いに見つめ合う。
赤い瞳、青い瞳。異なる色の視線が交差する。
すると、シグルーンが割り込んだ。
「はじめまして!! シグルーンです!!」
「は、はじめまして。カルセドニーです」
「えへへ、おうじさまみたい」
「え?」
「こ、こらシグルーン!! えっと、カルセドニーでいいかい? 我が家を案内するよ!!」
「えへへ、手をつないでいいー?」
「あ、ああいいよ」
どうやらシグルーンが懐いてしまったようだ。
エイルは困ったように歩き出し、カルセドニーは笑みを浮かべてシグルーンと手をつなぐ。
そんな三人を、ブリュンヒルドは一歩下がって付いて行くのだった。
◇◇◇◇◇◇
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