#2 仲介人サリア

 そういえば、今日は集会の日でした。集会とは月に一度、人間と悪魔がこの家の前に集まり、互いに抱えた問題を解決するための話し合いです。


 私は扉を開けて太陽の位置を確認しました。正午ではありません。しかし、もう少し立てば直ぐにでも昇ることでしょう。


 彼らは正午を合図に出発します。特にこれといった準備はありませんが、気持ちの整理ぐらいはしなければなりません。何をされるか分かりませんから。


 つかの間の幸福を過ごしました。刻一刻と迫る集会によって緊張感が高まります。呼んでいる小説の『集成』というタイトルまでもが『集会』に読めてきました。まぁ、大して意味は変わりませんが。


 読んでいた小説を畳んで、壁へ掛けていた御旗みはたを取ります。中央に銀で書かれた片翼、金の糸で縫われた白布。天国の国旗をモチーフにデザインされたものです。


 来た。


 外へと出て両者を迎えます。彼らは同時に着いたようです。人間は馬車を使って。悪魔は羽を使って。


「両者共に到着しましたね。では早速ですが、集会を始めさせていただきます。担当は私、天使サリア・シャーロット。宜しくお願い致します」


「いきなりだけどさ、お前らこっちの土地入り過ぎな」


 人間側の先攻。これは事実。悪魔は過度に人間の保有する土地へ侵入しています。


「始めたのはそっちだろ?それにお前らは個人間の問題だって言ってただろ?今更過ぎるわ」


 悪魔の後攻。これも事実。始めたのは人間。個人間の問題と言ったのも事実です。


「今の情勢を見てまだそんな考えしてんの?頭の悪い発言は控えて欲しいね」

「良い悪いの問題じゃない。やっぱなしでなんて受け入れられるわけないだろ。馬鹿はそっちだ」

「情勢って言ってんだろ」

「そっちの情勢でコロコロとルールを変えるな」


 今更ですが、ここシャーロットは中央に位置し、周りを囲むように人間と悪魔が住んでいます。要するにドーナツ型です。


 では天使の国はシャーロットなの?違います。離れた土地にあります。


「悪魔は話にならん」

「こっちのセリフだ。神の失敗作が」


 らちが明きません。互い感情的になり過ぎです。

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