太陽を穿つ天使
上白糖 赤飯
#1 天使サリア
机に向かって昇任試験の勉強をしていました。天使から大天使へ昇任するには、神学を学ぶ必要があります。ここでは言語能力がいかにあるのかを計られます。
例えば――――
『もし私たちの誰もが銃を持っていないのなら、いったい誰が太陽へ向けて撃っているのでしょうか?』
私はこう解釈します。銃は暴力であり、太陽は命や生命を表している。私たちが生物である限り暴力という本質からは逃げれない。よって『私たちの誰もが暴力という手段を持っているのだから、誰もが暴力をしない世界はありえない』と解釈できる。
もちろん、これといった正解はありません。あくまでも言語能力の試験です。あなたはどう解釈しますか?
「よし、試験までは時間まだある。休もっと」
本とノートを畳んで本棚へしまいます。そしてベッドへ座って周りを見ました。
決して広くはない家。けど木製で出来たものが多く、とても気分の休まる雰囲気。唯一のつかの間の幸福。この境目で唯一の中立地帯・シャーロット。私はここの仲介人です。
ドンっと地面を叩く音が鳴ります。私は驚きもせずに、いつも通りの表情で家の裏へ回りました。
「はぁ――」
またですか。
馬の死骸。内臓が綺麗に取り除かれた腐りかけの死体。それにいつまでも群がるハエ。
ここで授業です。『天使は翼を。悪魔は羽を。では人間は?』それは足です。馬、馬車、船、人間は自らの足を作り上げ、生来を超えた移動手段を持ちます。
現場に人はいませんが、恐らく人間の仕業でしょう。足跡から見て三人。悪魔の偽装かも知れませんが、前に一度人間を見ました。天使を嫌った一部の共同体ですね。困ったものです。
「夜中にいつも、本当にご苦労ですね」
ストレスのはけ口なのでしょうね。それに、私はこの死体を消せます。奇跡や守護、呪いを用いれば容易です。
私が軽く腕を振ると死体は消えました。安心してください。ハエに罪はありません。消すのは死体だけです。
「いかんせん、臭いはどうにもできませんね」
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