第5話 ウィザードパンク! 5
「どうしよう?」
「何がだ!?」
自分を担いで必死で走るナイヴが律儀に訊き返してくれる。
「私は生きたいみたいだ。生きてくだらない
親に死ねと言われて、生きたいと思う理由がそんな物なのか? リィンは自分の単純さに呆れそうになる。だが真実だ、真実それなのだ。
「良いな、くだらないは大事だぞ」
貧困地区を抜けて商業地区を走る、ジャケットが身体強化をフルに使っているせいで熱を持つ。格段に身なりの良い人々が逃げ惑う。
それで思わず疑問が口を突く、泣きながら。
「無関係な人だらけだけど!?」
ナイヴが巨大な高級デパートメントに駆け込む。更に人が増える。
「ここの連中は死んでも蘇生魔術の代金に困らないだろ!?」
成る程? リィンは納得しつつも首を傾げた。
自分達に驚いた人々が逃げ惑いマネキンを倒し、商品棚が崩壊し、悲鳴を上げる。
それに――ナイヴが笑う、リィンには見えなかったが声で分かった。
「子供と命を狙われてる奴は我儘で良いんだよ!」
嗚呼、うん。そっちの方が納得できるね。
リィンは涙をぬぐった。
「ナイヴ! 私を助けて!」
人生初の我儘だった。
助けてと、子供に言われて断る道理をナイヴは知らない。
街の流儀からは随分と外れた考え方だ、不利益も山程、何なら直球で馬鹿にされる。それでもナイヴはその道理を知らない。それが前世の記憶に引きずられた物だと自覚しても。
「依頼料はキッチリ払えよ!?」
だが口は悪いし、素直じゃない。
お金取るの!? 驚くリィンに笑みが浮かぶ、全くだ。
「タダ働きなんぞやってられるか」
肩の上でリィンがワタワタと自分の服を探って払える物が無いと嘆く。
それでもナイヴは報酬なぞ無くても、とは言ってやらない。そんな事を言うのは恥ずかしいし、現実的には自分の手札が品切れ状態で、どうにかしてやれるか分からなかったからだ。
「そうだ!」
初手で切った最後の切り札を惜しみつつ、打開策を考えていたらリィンが叫んだ。
何だ?首を傾げる前に、自信あり気な声が耳を撫でる。
「現物支給でどうだい?」
示された報酬に、ナイヴは笑った。
獰猛に。
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