冤罪魔法使いの逃亡異世界旅路録

柏兎 レイ

ネルムシテアに向かって

第1話 覚悟

「此処を抜け出せば自由のチャンスか……」


 とある王国の地下牢。牢の壁と首や足に鎖で繋がれた獣人が立ちながらそうボソッと口にするのであった。

 彼の名は「ゼノ・アーク」と言い種族は狼の獣人とエルフのハーフ。身長は、175cmくらいありガタイもよかった。ピョンピョンはねた藍色の髪の毛から見える同色の毛で覆われた耳。背中の尻尾を見るとやはり狼であった。そんな彼が何故こんな所に居るのか。それはこの王国で起きている奇妙な連続犯罪に巻き込まれたからである。

 今から二週間前の出来事である。ゼノは夜風に辺りながら歩いていたが衛兵に犯罪者と勘違いされ詰められてそのまま拘束された。無罪だと言い張るが認められず此処に入れられたのだ。人間ではない種族のために厳重に拘束されて抜け出さないようにされて来た。しかし、ゼノには甘かったようで、定期的にある検査の時に拘束が手錠と足枷のみになるのでそのときに魔法で溶かし破り脱出しようと考えていた。


「13051番。壁側を向きその場にしゃがみなさい」


(覚悟決めてやるぞ。絶対に俺は……

 ———逃げきってみせる。)


 全身の拘束が解かれて新たなものと取り替えられようとした瞬間に体を立ち上がらせてそのまま看守を押し倒して牢から出る。牢の中は魔法が使えないため外に出ると使えるようになる。なのでまずゼノはいつもの服に一瞬で着替えてそのまま杖を取り出して地下牢を走り出すのであった。後ろから魔法を撃たれるも避けたり、防御魔法で対策をしたので気にせず走っていた。

 階層を上がる毎に看守の怒号やトラップは増えていき危険度が増してきた。だが、魔法で防げる物しかないので危険度は低かった。だが、ゼノは攻撃する余裕がないため走り続けた。


「出口か?取り敢えず開けるか……」


 地下牢を駆け抜け数分。階段を上った先には重い鉄の扉があり、ゼノは手を掛けて開ける。すると外から日が差し出してきた。


 ———ハァハァハァハァ


 そう息を荒らしながらゼノは路地裏にしゃがみこんでいるのであった。追手はどんどん来ており人混みのない所ではすぐに見つかってしまう状況だ。だから、人混みに紛れ込めるこの時間帯に国からでなければならない。もしくは夜まで耐えて暗闇に身を隠しながら出るか。

 どちらにせよ出ることには変わらないのでそこまで深刻な問題ではなかった。だが、ゼノにはそれ以上の問題があった。


 (資金調達どうするか……。王国から遠いところ行けばギリギリ雇ってくれるところあるかなぁ)


 そう考えながら立ち上がり歩き始める。ゼノからは「敵」である衛兵や騎士を確認することが出きるが彼等からは人混みによりゼノのことを見つけるのは至難の技であった。今行けば確実に出ることが出来るが準備が何もできていない。だが、それで準備をするために店を回ったら捕まる可能性が高くなり折角出てこれたのが水の泡となる。


(仕方ねぇ。現地現地で継ぎ足しだ)


 そう心にとどめてこの国の門の方へ歩いて行く。

 門は、情報が回っていないので軽々突破することができた。戦うこともなく面倒臭くない楽な方法で出れたのでゼノは内心喜んでいた。そして、何もない草原の道を数分進むと前から歩いてくる案内人と言う看板が書かれた2人の男性が歩いているのであった。彼等は文字通り案内人であり有志のボランティアや仕事として派遣されている者で構成されている。主な仕事としては冒険者・旅人の道案内をしているのである。まぁ、道案内と行っても助言してくれる程度だが……

 ゼノはその案内係の目の前まで行くと話しかけるのであった。


 「王国の影響を受けない町に行きたい」


 それを聞くと男性は考え始める。そして、結論を出したようで、話し始めるのであった。


 「ここから北に行くとネルムシテアと言う都市があって、そこは王国から支配を受けてない完全自治都市だから……」


 「そこに行くといいよ。ここから4ヶ月くらいで着くから」



 1人目の男性が話しているうちにもう一人の男性が〆となる言葉を話すのであった。そして、ゼノは情報を整理し別れを告げて歩き出すのであった。


 「待ってろよネルムシテア。捕まる前に辿り着いてやる」


 1人でそう口にしながら誰もいない草原をただ目的地に向けて歩いていくのであった。





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