第24話 閑話 むかしむかしのものがたり


※リリアの前世のお話。






 自分の生き様を悔いることはないけれど。

 女の子なのに『中二病』を患っているのはかなり致命的だと思う。特に、高校生にもなって中二病なのは自分でも呆れかえってしまう。そりゃあ彼氏いない歴=年齢になるってものだ。


 でも、しょうがないじゃないか。妄想を止めることができないのだから。

 傘を握れば明治の浪漫譚がごとく牙○の練習をしたくなるし、壁を見れば二○の極みをやってしまう。布団に入ってからは『私はきっと神さまの転生体で、将来の大英雄で……』なぁんて空想の世界に入り浸ってしまうかなりの“手遅れさん”だ。

 むしろ人目を気にするようになったのだからだいぶマシにはなったのだと自画自賛。私は今日も元気です。


 こんな私ではあるから当然友達はいない。

 ただ、幸いなことに“親友”はいてくれた。


「だからね! ファンディスクのミリス様がすごく可愛いの! 璃々愛りりあももう一度やろうよ!」


 私の机に両手を叩きつけながら親友・愛理が叫んだ。徹夜で全クリしたせいか超絶ハイテンションだ。

 ま、それだけ『ボク☆オト』が面白いゲームってことなのだろう。


 ここは教室で他のクラスメイトもいるのだけどみんな慣れているのかこちらを振り向きもしない。


 ちなみに『璃々愛』とは私の本名だ。別にハーフって訳でもないのに。両親には基本感謝しているがこのキラキラした名前(ネーム)は勘弁して欲しかったかもしれない。正直、画数が多くて名前を書くのが面倒くさいし。


 閑話休題。こんな現実逃避をしていては我が親友殿は止まらないだろう。


「あのねぇ愛理。何度も言ったけどファンディスクは無理だって。あんな可愛いリリアちゃんが悪役令嬢にされちゃったのよ?」


 うん、別に自画自賛ではない。リリアとはソシャゲ開発も発表された乙女ゲーム『ボク☆オト』の主人公であり、名前が一緒な私としては肩入れ具合が天元突破しているのだ。銀髪クーデレとか萌えのド真ん中を撃ち抜いているし。

 そんなリリアちゃんがファンディスクでは悪役令嬢? 処刑やら奴隷落ちだと? ふざけるなって話である。


 私はハッピーエンドが好きなのだ。バッドエンドなんて認めない。

 一流の悲劇(かなしみ)より三流の喜劇(よろこび)を。

 そしてあのファンディスクは三流の悲劇・・・・・だ。


「何度も言うけど私にとってあのファンディスクは不倶戴天の敵。水と油。呉越同舟なのよ」


「呉越同舟だと同乗しているじゃん」


 冷酷な親友からのツッコミにも負けない私、超健気。


 そんな健気な私はリリアちゃんを守るためにも毅然と立ち上がった!


「よく聞きなさい親友! リリアちゃんは私の夢☆第一位を『宇宙飛行士』から『ゲーム世界のモブに転生してリリアちゃんの幸せを全力で応援する!』に変えたほどの美少女! そんな彼女の幸せを否定するファンディスクをこれ以上進める気はないわ! というかもう中古屋に売り払い済みよ!」


 健気に大声で宣言した私であった。(ちなみにここは教室で他のクラスメイトも多数存在)





 なにやら懐かしい出来事を思い出した。


 ……いや、ねぇ? 確かに私はゲームの世界に転生するのが夢だったよ? リリアちゃんの人生を“一流の喜劇”にするために行動するつもりだったよ?


 でもさぁ、いくら名前の読みが一緒だからって、まさかリリアちゃん本人に転生するとは思わないじゃん? しかも私の知識が流れ込んでしまったせいかクーデレになるはずが中二病っぽくなってしまったし。


 どうしてこうなった……。


 あ、でも、クーデレなリリアちゃんも良かったけど元気いっぱいなリリアちゃんも可愛いからこれはこれでありかもね。うん。


 自分を納得させた私は今日もリリアちゃんの健やかな成長を見守るのであった。萌え萌え。






お読みいただきありがとうございます。面白い、もっと先を読みたいなど感じられましたら、ブックマーク・評価などで応援していただけると作者の励みになります! よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る