第101話 勝者は?
戦場は、沈みゆく夕陽の赤い光に染められた。
その中心で戦士たちは、それぞれの疲労を押し隠しながら、互いを睨みつけていた。血と泥にまみれたその姿は、もはや人間の戦士というよりも、戦場に生きる獣そのものだった。
戦場に響くのは、遠くで倒れ伏した者たちのうめき声と、風に揺れる木々の音だけ。その静けさが逆に、ここに立つ者たちの緊張感を高めていた。
「フライ・エルトール……ようやく直接相まみえる時が来たな」
ブライド皇子が低く冷たい声で言う。その隣に控えるのは、アイクとエドガー。アイクは剣を握りしめ、エドガーは傷だらけのゴーレムを操りながら、ブライド皇子を守るように立っている。
「お前の仕掛けた全面戦争も終結だ。だが、この状況を作り出した才能だけは認めてやる」
ブライド皇子の瞳は獰猛な戦士の一人として、この場で剣を握っていた。
「終わらせる? そう簡単にいくかどうかは、やってみないとわからないですよ」
私は微笑みながら剣を構える。その背後には、バクザンとノクスが控えている。二人とも満身創痍だったが、その目にはまだ闘志の炎が灯っていて頼もしい。
「フライの兄貴、ここで決めるんだな?」
バクザンが拳を鳴らしながら言う。戦斧は砕け、その身で戦う姿勢を見せた。私は彼に軽く頷き、視線をアイス王子陣営に向けた。
湿地帯から抜け出して、ここに到達したアイス王子は、既にボロボロの状態だった。それでも彼の隣に立つエスカルーデは、竜化した姿で未だに威圧感を放っている。
「フライ・エルトール、君はとんでもない策を使ってくれたな。早々と二つの陣営を取り込み。私とハーケンス皇子をこの場に連れ出し、二局戦争を仕掛けるなんて、この混沌を生み出したこと素晴らしいと思うよ」
アイス王子の声は冷静だったが、その奥には焦燥が見え隠れしていた。
「ふむ、終わらせたいのはこっちも同じさ。さぁ、やろうか。これが最後の舞台だ」
私の言葉に応じるように、エスカルーデが一気に飛び上がった。その巨大な翼が風を巻き起こし、戦場の緊張を一気に解き放つ。
最初の一撃を放ったのはエスカルーデだった。彼は竜化した姿で空から急降下し、鋭い爪を私たちに向けて振り下ろしてきた。
「ノクス、バクザン!」
私は二人に指示を飛ばし、ノクスが剣を構えてエスカルーデの爪を受け止める。火花が散り、激しい衝撃音が周囲に響き渡る。
その間にバクザンが側面からエスカルーデに拳を叩き込む。
「これが俺たち鬼人の力だ!」
バクザンが叫びながら追撃を加えるが、エスカルーデは翼を広げて一気に距離を取る。その姿には疲れが見えたものの、まだその攻撃は衰えていない。
一方、ブライド皇子の指示でゴーレムが動き出した。その巨体が地を揺るがしながら、アイス王子に向かって突撃する。
「エドガー! 俺たちを巻き込むつもりか!」
アイス王子が叫びながら防御の魔法を展開するが、その魔力も限界が近い。ゴーレムの一撃を受け、アイス王子は後退を余儀なくされる。
「我が駒は使い潰してこそ意味がある。我の邪魔をするな」
ブライド皇子が冷たく笑いながらゴーレムの動きを指示する。その攻撃はアイス王子だけでなく、こちらの陣営にも及ぶ。
「おいおい、共闘してるつもりか?」
私は軽く呟きながら剣で、ゴーレムの足元を崩してその動きを封じる。
崩れたゴーレムによってエスカルーデが、ダメージを負って、ノクスとバクザンも巻き添えを食らう。
「ぐっ!」
「うっ!」
「GYAAAA!」
三人がエドガーのゴーレムによって倒れ、エドガー自身も魔力を使い果たして倒れた。
戦いが熾烈を極める中、ついに主力だけが残っていた。ブライド皇子とアイク、アイス王子と私。
「さて、ここからは個人戦だね」
四人になった戦場で、ブライト皇子とアイクの陣営だけは二人いた。
「フライ君、ここは共闘と行かないか?」
アイス王子の提案に、私は笑みを浮かべる。返事をする前に、ブライド王子が剣を振り上げる。
「フライ・エルトール、貴様の策には辟易したが、ここで終わりだ」
ブライド皇子が冷たく呟きながら剣を使って、私とアイス王子を分断した。
その隣でアイクが無言で私に追撃を仕掛けてきた。
「終わるかどうかはやってみなきゃわからないね」
私は微笑みながら剣を構え、アイクに向けて一歩を踏み出した。
剣と剣が交わり、火花が散る。アイクの剣筋は鋭く、隙がない。一方、ブライド皇子とアイス王子もぶつかり合う。
「邪魔者は先に葬り去ってくれる。竜人を従えたのは褒めてやるが、貴様の策略もここまでだ。最後の一撃だ!」
ブライド皇子が叫びながら剣を振り下ろす。アイス王子はその攻撃を受けたが、氷の魔法を放って自爆する。
それはブライド皇子を道連れにする一撃を放っていた。
「余所見とは余裕だな」
アイクから視線を逸らした瞬間に激しい衝撃音と共に、お互いの剣が弾け飛ぶ。
私とアイクは、「同士討ちか」 アイクの短剣が私を捉え、私の魔法がアイクを吹き飛ばした。
「初めて魔法を使わされたよ」
静寂が訪れ、私とアイクは膝をついた。
視線は、ブライト皇子とアイス王子に向けられる。
ブライド皇子が苦笑を浮かべる。
「悪くない結末だ」
ブライド皇子が一人で勝ち名乗りを上げるように剣を突き上げる。
私は微笑みを浮かべた。
「お膳立ては疲れるね」
戦場には、戦いを終えた静けさが広がっていた。最後に立つ者は誰になるのか、それはもはや問題ではなかった。
『勝者!』
実況の声が聞こえたけど、私は疲れたので、目を閉じることにした。
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あとがき
どうも作者のイコです。
ギリギリだ〜今日はここまでw
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