第86話 クラウン・バトルロワイヤル開始!

 雲一つなく、真っ青な空が広がっている。


 競技が始まる日は、奇妙な緊張感と期待が入り混じる独特な空気を感じる。


 それは競技選手に選ばれた者たちが、緊張から空気を重くしている。


「クラウン・バトルロワイヤル」


 その名が示す通り、これは王冠を司る王を巡る熾烈な戦い。


 八つのチームがそれぞれ陣地を与えられ、互いのクラウンを奪い合う。勝者はたった一つのクラウンを守り抜いたチームだけになる。


 セシリアがクラウンを務めるローズガーデン陣営は、二十名の編成を終えている。


 私の奴隷たち七名。それに追加で、エリザベート、アイリーン、ノクス、バクザンに声をかけた。


 私を入れて十一名がセシリアの陣営に参加した。


 残りの九名はセシリアが用意した者たちだ。


 彼女の護衛である女騎士リリアさん。


 そして、セシリアの取り巻き数名を加えて、二十名を揃えた。


 私たちに与えられたフィールドは、広大な森林地帯だった。


 鬱蒼と茂る木々が視界を遮り、小川がところどころを流れている。森の中には簡素な建物がいくつか設置されており、そこには食料や水、野営用のテントが用意されていた。


 だが、それらはあくまで最低限のもので、必要な物は事前に陣営が学園都市の運営に連絡を入れて取り寄せてもらっておく。


 ここから先は自分たちで、一週間を生き残り、他の陣営を打倒して優勝を目指すことになる。一週間の時間制限がある以上は、様々なイベントも用意されていて、ゲームが開始されれば、考えることはどんどん増えていくことになる。


「ここが俺たちの陣地か。いい場所だな」


 バクザンが森の中を見回しながら楽しそうにしていた。彼は傭兵として戦場を巡っている。どんな状況でも適応するだろうから、調査はバクザンとシーバに任せる。


 川辺には、モムモを配置して、敵からの襲撃に備えてもらう。


 伝令役はメムが空を飛んで行ってくれる。


「フライ様、ここは防御に向いていますわね。この森を利用すれば、外敵の侵入を阻むことができるでしょう」


 アイリーンもサポート役として、倉庫の管理や罠の設置を任せている。彼女の判断力は頼りになる。


「だけど、森ということは視界が悪いってことでもあるわ。どこから敵が来るか分からないし、油断したらすぐに陣地を奪われるかもしれないわ」


 エリザベートは、いつもの制服姿ではなく、鉄扇と呼ばれる特殊な武器を持って、戦闘服を着ていた。


「確かにその通りだ。森の中は敵も隠れやすいし、こちらの動きも制限される。ただ、これを活かすかどうかは僕たち次第だよ」


 セシリアが私たちを勧誘してきたので、クラウンはセシリアだ。


 だから、私は自らの役割に準じ、チームの中心として動く覚悟をしているだけだ。


「フライ様、私はこの戦いで勝ち残ります。あなたがいてくださる限り、私は負ける気がしませんわ」


 セシリアの声は自信たっぷりにそう言う。クラウンとしての決意は十分だ。


 その護衛役として付き添っているのが、セシリアに仕える女騎士リリア・フォルセールさん。

 長いオレンジ色の髪をポニーテールにまとめ、鋭いオレンジ目が特徴的な女性だ。剣技に優れ、髪や瞳が夕日ような色をしているということで「黄昏の守護者」と呼ばれているらしい。


「セシリア様を守ることが私の使命です。陣地防衛の要として、どのような敵でも排除します」


 彼女の言葉には揺るぎない信念があった。頼もしい限りだね。


「さて、まずはこの陣地の防衛を固めるのが先決だね。セシリアとリリアを中心に、クラウンの安全を確保しつつ、敵の動きを見極めよう」


 私は周囲を見渡しながら話を進めた。皆が耳を傾けているのを確認し、具体的な戦術を語る。


「まずは、それぞれの役割を伝えさせてもらう。その前に自己紹介をさせてもらう。今回の指揮官の役割を持つフライ・エルトールだ。指揮官として作戦の立案や指揮をさせてもらう」


 私の言葉に初めて会う者たちも拍手を送ってくれる。


「それぞれの役割については、後ほど話すとして、まずは指示を出させてもらう。バクザン、ノクス、君たちは森の把握を頼みたい。敵の侵入を知らせ、地理を理解してどこで迎え打つのか決める簡単な地図を作成する偵察をしてほしい。敵が近づいてきたらすぐに知らせてくれ。敵が少数なら撃退しても構わないが、無理は禁物だよ」

「了解だ、フライの兄貴」

「分かった。気をつけていってくる」


 すぐに二人は動き出して、建物を飛び出した。


「ジュリア、レンナ、君たちは陣地の周囲を巡回して警戒に当たってくれ。獣人や竜人の嗅覚や聴覚なら、敵の動きをいち早く察知できるはずだ。君たちが防衛の要になる」


 二人が頷くのを見て、次に目を向けるのはエリザベートとアイリーンだ。


「エリザベートは指揮の補佐を頼む。僕がいない間、必要な判断があれば臨機応変に対応してほしい」

「お任せください、フライ様」

「アイリーンには偵察を頼むよ。任せて良いかな?」

「当然ですわ。私に任せてくださいませ」


 次々と指示を出して、最初の準備に取り掛かる。


「さて、初日は様子見だと思うけど動くところはあるかな?」


 私たちは警戒をしながらも地理の把握に務めることにした。


 ♢


 広大なフィールドには、強力なチームが陣地を構えている。


 ブライド皇子が率いる「英傑チーム」、アイス王子の「銀の旗」、ロガン王子の獣人チームなど、総勢八つの陣営が一週間の間、互いに競い合うことになる。


「さて、僕たちの敵はどこになるかな?」


 私は思わず口元に笑みを浮かべた。すでに頭の中ではいくつもの戦術が浮かび上がっている。だが、それをどう実行するかはこれからの動き次第だ。


「みんな、いいかい? この戦いは勝つだけが目的じゃない。生き残ることも重要だ。無理せず、冷静に動こう」


 そう言いながら、私は目の前に広がるフィールドを見つめた。

 ここから始まるのは、単なる競技ではない。これは、知略のぶつかり合いだ。


「まぁ、面倒だけど、少しは楽しませてもらうとしようか」


 そう呟きながら、私は深呼吸を一つした。


 これから始まる戦いに備え、心を落ち着ける。どんな結末が待っているのかそれはまだ、誰にも分からない。


 ただ、ワクワクと楽しむ気持ちがないわけじゃない。


「どんな戦略を取るのか楽しみだな」


 戦略シミュレーションゲームをイメージして、心躍らせる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 今日はここまで


 体調を崩してしまいました。カクヨムランキングの最前線から離脱するのは悔しいですが、戦線を離脱して、更新を下げることになると思います( ; ; )


 明日、体調が戻ったら、投稿しようと思います!


 皆様、今年は一年ありがとうございました!

 また来年もどうぞよろしくお願いします!!


 良いお年を!

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