第85話 やるからには楽しむよね
《side フライ・エルトール》
ああ、仕方ない。本当にどうしようもないね。私の本質がゲームが好きだ。
道楽貴族として、第二の人生を謳歌して自由気ままな生き様を、ただ楽しめれば良いと思っていました。
実際に、自分の好きなことをして、人々から道楽息子と言われたとしても、一向に構うことなく、自分の楽しいと思う道を歩んできたのです。
それなのに、どうしても運命というものは私に挑戦権を与えてくる。
本来の戦闘なら、必死に逃げれば生き残ることはできると自負しています。
ですが、これはあくまで学園のゲーム。
そして、ゲームをするなら勝ちたいと頭で考えることはとても楽しいことです。
「クラウン・バトルロワイヤル」
それは、学園都市が誇るチーム競技であり、戦術と戦略、そして個々の力が試される大規模なイベントです。
参加していないときは、みんなが楽しそうにしているのを見ているだけで満足でした。
ですが、参加するなら、負けたくはないですよね。
ルールは一見単純です。
各チームには「クラウン=王」と呼ばれる一人が決められ、王を守りつつ、他のチームのクラウンを奪うのが目的になります。
クラウンを失えば敗北、最後にクラウンを保持しているチームが勝者となります。
これは一種の国取りゲーム。
王を奪い合う騙し合い。殺し合い。ただし、とても奥が深い。この競技はフラッグ奪取に似ていますが、いくつかの点で異なる特徴を持つ。
基本ルール
1、チーム編成
各チームは最大二十名までという縛りがある。少数精鋭を選ぶか、バランスを重視するか、ここで指揮官のセンスが問われる。
2、クラウンの役割
チームの象徴であるクラウンは、王だ。
クラウンが倒されれば全てが終わる。もちろん、王が戦うこともできるが、制約が用意されている。王を倒せるのは革命家と裏切り者だけ。
つまり、20名の選ばれた存在には役割が与えられ、それぞれの相性によって役割が変わってくるのだ。
王を奪われたチームは即敗北となる。
クラウンを誰にするのか、どこに配置するのか、その判断が勝敗を分ける。
3、陣地の与えられ方
参加表明後、学園都市内にいくつかの「戦域」が割り当てられる。陣地の場所はランダムだが、地形や資源の有無が戦略に大きな影響を与えるため、初期配置をどう活用するかも試される。
これに関してはエリアが決まらなければ、判断はできない。
4、戦闘の自由度
この競技では、敵の戦力を直接排除することも認められている。倒しても失格にはならないが、過剰な暴力はペナルティを受ける可能性がある。そのためダメージを肩代わりしてくれる身代わりの魔石を装備して、外したり、一定のダメージを追うと失格(戦死)扱いとなる。
戦場では手段を選ばない者も多いための、危険防止の処置だ。
一見、力がすべてのように見えるこの競技だが、実際には知略と戦略が勝敗の鍵を握る。
♢
では、全体的なゲームに戦略はどうなるのか?
1、防御戦略
クラウンを守るのは至上命題だ。だが、守りに徹しすぎれば他のチームに攻め込む機会を失い、最終的には敗北を招く。
クラウンを奪われた陣営の生き残りは、そのまま奪った陣営に吸収されるからだ。
これは国取り合戦であり、戦争が終わるまで勝利者に従うのが通りというルールがある。
そのためクラウンの守護だけをしているだけでは勝てない。
たとえ、堅牢な防御力を持つ強者を用意しようと、地形を活かして戦える場所を獲得しようと、数の力にはいずれ勝てなくなってしまうからだ。
2、攻撃戦略
積極的に敵のクラウンを狙う攻撃役は敗北すれば失格のリスクが高くなる。
だが、20名のチーム役割をどのように割り振るのかは自由ではあるため。
攻撃ばかりに振って高い機動力と攻撃力を持つ者を編成して、最速でクラウンを落とし、敵の陣営の防御を味方につけるという戦略を取ることもできる。
防御と攻撃は各々が大切な役割を持っており、バランスを取るのか、偏らせるのか、全てはクラウンの判断次第だ。
3、偵察と情報戦
戦場の地形や敵の配置を把握するのも重要な一つになる。
ゲーム開始前に事前に敵の陣地を知れたなら、その調査を怠ってはいけない。それができないなら、どんな罠が仕掛けられているのかも予想できないのだから。
4、心理戦
さらに、競技は一週間近く行われるため、同盟や協力などを使って、敵陣営を惑わせる情報操作なども行える。
同盟を装って裏切る策略もこの競技の醍醐味だ。単なる力のぶつかり合いではなく、如何に相手を出し抜くかが勝負の分かれ目になる。
♢
さて、基本的なゲームの情報で、取れる戦略について考えるだけでワクワクしてくる。
私はこれまで、競技に参加するつもりがなかったので、全く興味を持っていなかった。
あくまで戦争ごっこに過ぎないと考えていたからだ。
だが、参加するからには、楽しみたい。
ブライド皇子やアイス王子が動き出し、彼らと本気で遊ぶのだと思うとワクワクしてくる。
様々な派閥や個人がこの場で名を挙げようとしている。
ここでの勝利が将来の勢力図に影響を与える可能性もあるという。
「楽しいね」
「ご主人様、楽しそうなの!」
「ジュリアも参加してくれるんだろ?」
「もちろんなの。レンナもなの」
「ああ、そうだね。セシリア陣営は、あまり戦闘が得意な人はいない。セシリア嬢の護衛騎士が一人いるようだけど、それ以外は僕の好きにしても良いと言ってもらったからね」
私はそう自分に言い聞かせながら、ジュリアのモフモフな頭を撫でて逸る気持ちを落ち着かせる。
まず第一に考えるべきはチーム編成だ。
二十名の縛りの中で、どのようにバランスを取るかが重要だ。強力な戦士を揃えるだけではダメだ。戦場を制するのは力だけではなく、連携と戦略だ。
ロガンやバクザンのような圧倒的な戦闘力を持つ者は、攻撃役として間違いなく役立つだろう。
一方で、ノクスのように冷静な判断力を持つ者には偵察や補佐役を任せるのが良い。
防御役には、ジュリアやレンナのような堅実な戦士を据えるべきだろう。
そして、情報戦や心理戦には、エリザベートやセシリアのような知略に長けた者たちを起用する。
さらに、私はこの競技のもう一つの醍醐味に気づいていた。
それは「交渉力」だ。
競技のルールには「裏切り」を禁じるものはない。つまり、戦場では一時的な同盟が成立することもある。私はその状況を最大限に利用するつもりだ。
「どうやら、僕の退屈な日々も少しは楽しくなりそうだね」
そう考えながら、私は戦場での自分の姿を思い描いた。
誰が敵で、誰が味方になるのか。それは戦場に出てみないと分からない。
だが一つ確かなのは、この「クラウン・バトルロワイヤル」がただの遊びではないということだ。
私の思惑と、彼らの思惑。それが交錯する戦場で、私はどのように立ち回るべきだろうか。
「まぁ、なるようになるさ」
そう呟きながら、私はこの戦いを少しだけ楽しみにしていた。
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あとがき
どうも作者のイコです。
今日はここまで!!!
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