第36話 教えてエリザベート先生
僕はこの世界の常識については正直にいうと詳しくない。
世界のありようや、大きな歴史の流れは理解しているが、細かな設定などは、小説に書かれていたとしても覚えていないからだ。
これがゲームとかであれば、その細部までやりこんで理解したりするんだけど、いかんせん小説の中で設定されていることは理解できていない。
「なるほど、わたくしにゴーレム決闘の立ち合いとルールを教えてほしいということですわね」
「ああ、エリザベートは賢いから知っているんじゃないかと思って」
「もちろん理解しておりますわ! ですが、意外ですわね。ゴーレムなどの研究は女性よりも男性の方が好まれる研究者が多いので、フライ様もお好きなのかと思っておりました」
エリザベートに指摘されるまで、興味がなかった訳じゃない。
ただ、それ以上にこの世界は楽しくて、興味が尽きないので、手が回らなかったという方が正しい。
「うん。興味はあるんだけど、今まで関わる機会がなかったから、この機会に勉強しておこうと思ってね」
「そうでしたか、それでは僭越ながら、わたくしが説明を担当させていただきます!」
「「「「おお!」」」」
僕の横にはジュリアとレンナが座っている。二人にはそれぞれ役割を与えていて、今回は一緒に勉強してもらうつもりだ。
それに、ドワーフのチョコにはゴーレム作りに協力してもらうために参加してもらった。
「まず、ゴーレムと言っても素材によって名前が様々です。ストーンゴーレム、ウッドゴーレム、アイアンゴーレムです。今回の素材になるゴーレムたちです」
ストーンゴーレムは素材を石で、ウッドゴーレムは木、アイアンゴーレムは鉄だね。
「それぞれの特徴として、アイアンゴーレムは強度が高く攻撃力が最も強いゴーレムです。その代わりに動きが遅く、魔力の消費が激しいため、30分という戦いには魔力を維持することは難しいと考えられます」
なるほど、アイアンゴーレムのメリットは強い攻撃力の代わりに魔力の消費が激しく動きも遅い。
「次に、ウッドゴーレムは魔力の通りが良いため、消費は少なく。動きも機敏です。ただ素材が木であるために強度は他の二体に劣り、攻撃力も高くはありません。魔導具で強化もできるでしょうが、ゴーレムに器用さはありませんので、精々が握って振り回せるだけです」
ウッドゴーレムは動きは早くて、魔力消費も少なくて済むけど。攻撃力が低く、防御力もないから、決め手に欠ける上に一撃を貰えば終わりってことかな。
「最後に、ストーンゴーレムです。一番スタンダートで、ゴーレム決闘では一番使われることが多いゴーレムです」
「それはどうして?」
「バランスが良いからですわ。魔力の消費は、アイアンゴーレムよりも少なく。ウッドゴーレムよりも多い。強度はアイアンゴーレムには劣りますが、ウッドゴーレムよりも強い。全てにおいてバランスが両者の間なのです」
なるほどね。ストーンゴーレムを選べば、バランスが良くてスタンダードに勝ちやすいというわけだ。
さて、それぞれの特徴は理解できた。そして、実際にエリザベートにゴーレムを作ってもらって、ジュリアにはウッドゴーレムを、レンナにはアイアンゴーレムを作って使って模擬戦を行ってもらう。
二人とも魔力量が多いので、実際に戦っているところを見せてもらうことにした。
「ふふん、どっちがご主人様の一番奴隷が決めるのです!」
「はっ! お前が一番に奴隷になったからって、こだわってんじゃねぇよ。一番は強い私だ」
「学園でも、どこでも一番一緒にいるのはボクです! 負けません!」
何やら二人にも因縁があるようだ。奴隷の一番などどっちでもいいと思うが、本人たちの気持ちなので、好きにやらせてあげよう。
私は二人が戦っている間に、データを取り、エリザベートに質問を投げかけます。
「ゴーレムの形は同じなのかい?」
「はい。基本となるストーンゴーレムが見本となっていることが多いのですが、ウッドゴーレムも、アイアンゴーレムも似たような形になることが多いですね」
関節が存在しない。ゴーレムの見た目は素材同士が繋ぎ合わさったような存在です。
それを魔力で繋ぎ合わせて維持しています。
繋ぎ合わせた素材たちを人型にして、立たせて姿勢を維持して、さらに戦わせなければいけません
操作が難しくなるのは当たり前ですね。魔力だけでなく、コントロールする技術も必要になります。
ただ、ゴーレムは術者が直接戦わないので、上手く破壊できれば、術者本人の強さは関係ないということです。
戦略や戦術、ルールによって勝敗は分かれるようですね。
「勝った! ボクの勝ちです!」
「くっ!? 直接戦えば、私の方が絶対に強いのに、ゴーレムなど使うから! クソっ!?」
魔力量的には、ジュリアの方が少なかった。だけど、ウッドゴーレムの機敏な速度を生かして、アイアンゴーレムを操るレンナを翻弄してみせた。
相手の魔力を枯渇させたジュリアの作戦勝ちだ。
頭に血が上って、追いかけ回した挙句に魔力を使い切ったレンナは魔力切れで倒れている。
「なるほどね。二人ともありがとう。良いデータが取れたよ」
勝者であるジュリアの頭を先に撫でてあげて、モフモフを味わう。そして、倒れているレンナの頭を次に撫でて労う。
「くそっ!」
「ふふ、ジュリアが一番なのです!」
勝ち誇っているが、二人が仲良くなってくれるのは良いことだな。
それに私としても、ゴーレムの可能性について思いついたことがあるので、早速エリザベートとチョコに話して実現可能なのか、話し合いをしていく。
「えっ? そんなことが可能なのですか?」
「面白いです! ご主人様! ご主人様の発想は、今まにないので、是非やってみたいです!」
チョコも乗り気になってくれたので、残りの二日間はゴーレム作りに費やすことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます