第7話 幼い恋心 前半
《sideエリザベート・ユーハイム》
わたくしには想いを寄せる男性がおります。
エリザベート・ユーハイム伯爵家の娘としては、本来、エリドール家の長男であるエリック様と婚約を成立して支援を頂くことが大事でした。
本来であれば、姉上が婚約を結ぶはずでしたが、病弱な姉に変わってわたくしが選ばれたのです。
「エリザベート、本当にすまない。五歳のお前にはわからないかもしれないが、家族を守るためにどうかこの結婚を成功させてほしい」
お父様は悲しそうな顔をしてわたくしにお願いしました。
わたくしは最初こそ、意味がわかりませんでしたが、この婚約を成功させなければ、我が家は大変なことになると母から強く言われました。
実は、姉の病気によって我が家は資金が困窮しておりました。婚約をするならば、支援をしても良いとエリドール家から申し出て下さったというのです。
五歳の何もわからないわたくしは絶対に成功させなければならないという想いを抱えて、エリドール家に向かいました。
正面に座ったのは、二人の男の子で、一人は利発そうな年上の方でした。もう一人はぼんやりとした顔をして、わたくしと同い年の方でした。
なんとか話がまとまりかけた頃、わたくしがお茶をこぼすという粗相をしてしまいました。相手に失礼をしてしまった。
その時のわたくしは、顔が真っ青になって、何も考えられないまま呆然としてしまいます。両親も公爵家の方々に謝るばかりで、わたくしは泣きそうになりました。
「ふふふ、なんだか悪役令嬢みたいな顔をしているのに、可愛い女の子だね。ねっ、兄上」
「あっ、ああ。そうだな。フライのいう通りだ。エリザベート嬢。気にすることはない。緊張するのは誰にでもあることだ」
わたくしを救って下さったのは、先ほどぼんやりとしていると思った少年でした。フライ様。彼の言われた意味が理解できませんでした。
ですが、彼の一言で空気が変わりました。
公爵家のご当主様が、「心配しなくていい。それよりもドレスが濡れてしまったね」そう言って着替えてくるように言っていただけました。
さらに、話し相手にフライ様を向かわせてくれたのです。
「フライ様、ありがとうございました」
「うん? 僕は何もしてないよ」
「そんなことはありません。フライ様がお言葉をかけてくれたことで、皆様が笑ってくださいました」
「そうかな? 適当なことを言っただけだよ」
「あの!」
「うん?」
「悪役令嬢とはなんですの?」
フライ様がお話してくれた物語は、聞いたことがない刺激的な内容でした。
しかもそれをフライ様自身が考えたというではないですか?! この方はきっと天才です。
五歳のわたくしは、その時に目覚めた気持ちに気づくことはありませんでした。
エリドール家に遊びに行くたびに、エリック様は勉強や剣術の稽古が忙しいと、フライ様に相手をしていただいておりました。
その度に毎回刺激的なお話を聞かせてくれるので、わたくしはいつしか、エリック様よりもフライ様のことをお慕いするようになっておりました。
ですが、それは叶わぬ恋。
わたくしはエリック様の婚約者なのです。いくらフライ様のことを思っても叶いません。
「どうしたの? なんだか落ち込んでいるね」
「フライ様!」
十歳になりわたくしが恋心に気づき始めた頃、フライ様にもわたくしの変化に気づかれてしまいました。
なんと言い訳すればいいのか思い悩む私は嘘をつくことにしました。
「実は姉の容態があまり良くないのです」
「お姉さん?」
「はい。姉は元々病弱で、生まれながらに類まれなる魔力量を持っていると言われたにもかかわらず、体が病弱な長くはないと」
嘘ではあるが、嘘ではない。
実際に姉はいつも体調が悪くて、医師が家にやってきては多額の医療費を請求してくる。その薬や治療代に我が家は困窮していた。
「ふ〜ん、そうなんだ。ねぇお見舞いに行ってもいいかな?」
「えっ? フライ様が姉のお見舞いに来てくださるのですか?」
「うん。将来の義理姉の家族だからね。心配だからお見舞いに行きたいな」
「もちろんです!」
この時のわたくしは姉のことなど考えずに浮かれておりました。フライ様がわたくしの家に遊びに来てくれる。それだけの感動だったのです。
「なら、明日お邪魔するね」
「はい!」
連日のようにエリドール家に遊びに来ているのだ。我が家に明日来てもらっても問題はないはずだ。
しかし、両親には酷く怒られた。
フライ様をお呼びすること、そして病気で苦しむ姉への思いやりの無さに対してです。
怒られて初めて、自分が情けなくなってしまいました。
どうして自分はこんなにもバカなのだろうか? 自分のことばかりで、両親のことも姉上のことも、フライ様のことも考えていない。
これでは、フライ様がお話してくださる物語に出てくる悪役令嬢そのものだ。
自分の思いばかりで、他人のことなど考えない。
「フライ様をお迎えする準備をするのだ!」
お呼びしてやっぱりダメだとは言えないので、両親は体裁を整えて迎え入れた。
「よくぞおいでくださいました。フライ様」
「うん。ユーハイム伯爵、僕のことは気にしなくていいよ。今日はお見舞いに来ただけだから。エリザベート様の姉上にあったらすぐに帰るからね」
「そっ、そうですか」
「それとこれはお土産です。手ぶらだと悪いと思って」
十歳のフライ様はとてもしっかりしておられて、両親へ何かを渡して、わたくしにはお花を、姉上には栄養を付けられるようにと果物をくださいました。
「さぁ、エリザベート様、お姉さんの部屋へ案内してくれる?」
「はい!」
姉には申し訳ない。ですが、フライ様が我が家に来てくれてやっぱり嬉しいと思ってしまう。
子供なわたくしをお許しください。
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あとがき
どうも作者のイコです。
思いつきでここまで書いてみました。
どうなんでしょうね? わからない。
ブクマや星をして下さった方々ありがとうございます。
明日も思いついたら、書きます。
今日はここまで!
気に入ってくれたら、ブクマと星レビューをお待ちしております!
どうぞよろしくお願いします!
お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。 イコ @fhail
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