来た！　誘いに乗ってきた！　

魔王リーパーが眼の前で消えていく。魔力の接続も切れたのですばやくリーダーの一体を撃破。それと繋がっていたウッドマンは弱体化したので、意識から外す。すぐに魔王リーパーが俺の背後に現れる、はず。再びレーザーライフルを溜めて待つ。タイミングはマニュアルだ。

……そこ！　急前進のあと振り向きながら左腕に持っていたソードオフショットガンを撃つ。連射。俺の背後に出現して攻撃しようとしてきた魔王リーパーの本体に二撃とも命中。

そして、その命中した箇所にレーザーライフルを撃ち込む。即着弾が当たったことを確認してから隠し武器のマシンキャノンもついでに撃っておく。ミサイルが残っていたなら止めにぶち込むんだけど、残念ながら弾切れだ。

振り向いたそのままにバックで滑って下がるが、さすがに耐えるか。だが魔王がMTAならバリアは剥げ、アーマーも貫通され、ストラクチャにまでダメージが及んでいる状態のはず。

こっちのストラクチャにまで反動ダメージがあるからめったに使わないんだが。左腕に持っていた弾切れのソードオフショットガンをマウントする時間も惜しいのでその場に捨て、構え、残った燃料全て使うつもりでブーストをかけ、魔王に向けて前進、いや突撃する。

軽いMTAならキックのほうがいいんだけど、パーソナルフォートレスは超がつくほどの重量級だし、足はホバーで使っている。となればレーザー以外ほぼ弾切れの機体でやることは一つ。

パンチだ。

突撃の力も使い、ちゃんと腰の回転も利用して威力を上げた左正拳突きをソードオフショットガンを当て、レーザーライフルで焼いた箇所に打ち込む。

「どーっ、せーい！」

パーソナルフォートレスの左腕は魔王リーパーの体を貫通した。

まだ残った燃料を使って、緊急離脱を行う。相手がMTAだった場合ジェネレータや搭載弾薬の暴走、爆発、誘爆の可能性もゼロではないからだ。まあただのくせだな。

しかしそれは正解だった。しばらく動きを止めた後、魔王リーパーは特撮なんかの敵役みたいに爆発して消えた。生き残っていたウッドマンリーダー、ウッドマンも巻き込まれたのか遅れて爆発して、消えた。

同時にずっと流れていたBGM「魔王」もフェードアウトのように消えた。

「ふぅー。久々のカラテKOだ。ダメージリポート」

軽量級MTAならそれなりにあり得るけど、重量級はほとんどキックを使わないし、パンチも使わないので、カラテKOはほとんどない。

俗にパンチやキックで敵を倒すことをカラテという。なぜならカラテマスターという称号がそれらでMTA百機撃破、というものがあるためだ。

俺は重量級に乗ることが多いから、本当に久々だ。カラテは自傷ダメージがいやなんだ。

『パンチ使用による自傷ダメージが左腕ストラクチャーに評価４、肩関節、腰部に評価１のダメージ。過剰利用により三箇所の姿勢制御用アポジモーターに評価２のダメージ。自動回復されないダメージは以上です』

思ったよりましな被害だったなと思っていると、ふと視界に赤い何かが近づいてくるのが見えた。

新手の可能性を考え、身構える。

「索て……、いやいい」

近づいてきたのは先程の赤い鎧を着た王女様、エマだったか？　その人がすごいスピードで近づいてきたのだ。あんな鎧を来て、あんな速度で走れるわけがないし、そもそも足はほとんど動いていない。パーソナルフォートレスみたいにホバーで動いているようにも見える。

「装甲勇者（アーマーヒーロー）様！　加勢いたします！　魔王はどこに？！」

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