第6話 魔王

なんか音楽が聞こえてきた。そういやこのゲーム、不意打ちでボスが出てきて、それからBGMかかることが多かったな、いつものパターンってやつだな。

……なんか壮大な曲だな? オペラ? 人の歌声が混ざってるな。聞いたことある気がする。なんだったっけな。


そんなことを考えながら、相手の方を向きながらホバーで滑って後退していく。魔王リーパーは愚直追いしてきている。それでいい。

触れたものの熱を奪う、とか生身で戦っていい相手じゃないのは確かだ。だから全身鎧だったのだろうけど、MTAですら一瞬動作停止させるやつとかヤバすぎる。


このフルカスタム、セントリーターレット【ガーディアン】の代わりに外付けジェネレータを二つ背負ってきたパーソナルフォートレスだったからこそ、なんとか生き延びてるって感じの相手だ。……火力がいるってのあの手を撃ち抜くには並の火力じゃ無理ってことなんだろうし。


ただメインウェポンのレーザーライフルと相性悪いなぁ。レーザーライフル担当のサブジェネ2は再起動中だし、他のサブジェネ全部とも接続しているので、今はまだ使わないほうが良いだろうし。

そう思いつつレーザーライフルを魔王リーパーに向けて、前腕部に仕込んだ隠しマシンキャノンの牽制射で場をつなぐ。隠し武器なので連射速度、精度ともに低いがそれなりの攻撃力はあるやつだ。運良く一発やつの手に当たり、少し弾けた。キネティックは有効なようだな。……となると。


魔王リーパーが独立して宙に浮いているように見える大きな手のひらを下に向けて開いた。左右ともだ。その真下からウッドマンリーダーが生えてきた。

そのウッドマンリーダーはそれぞれ三体のウッドマンを生成したようだ。それら全ての敵意が俺に集中した。


おいおい、ファンタジーRPGにはありがちな配下召喚かよ。しかも孫モンスターまで。さらに魔力だったか接続状況が見えている。

サポートAIが気を利かせて可視化してくれたのだろうが、やっかいだな。リーダーも魔王に接続されているので、容易に破壊できないから孫のウッドマンも破壊しづらい、ということになる。


ウッドマンとリーダーが同時に攻撃を仕掛けてくる。射撃タイプの魔法だった気がするので横滑りで回避する。魔法でまさか偏差射撃はしてこないだろうという読みだ。してくるならランダムスラロームのほうがいいんだろうが。

読みは当たり、攻撃は全て回避、通り過ぎた地点が爆発する。爆発の規模を見る限り、直撃してもなんとかアーマーで耐えれそうだが、連続で食らうとアウトだろうからなぁ。


『ジェネレータ再起動完了、二秒後にフルパワー出せます』


「即時バリア展開。機動用とバリア以外全部レーザーライフルに集めろ」


レーザーライフルにジェネレータのパワーを集中、限界溜め撃ちだ。これ足止めないと撃てないけど、バリアが復帰したならなんとかなるだろう。


溜めている数秒が無限に長く感じる中、ふと思い出した。この曲、クラシック歌曲の【魔王】だ。だから魔王であり死神なんだな。


十分に溜めてから足を止めて試しにリーダーを狙い撃つ。どんなに溜めようと即着弾で相手の動きはそんなに早くないので外しようがない。しっかりと当てたけど、リーダーの表面は弾けたが、耐えた。

やっぱり無理か。あともう数発ぐらいなら溜め撃ちでも耐えそうだ。ならウッドマンに絞ろう。弱体化してたら通常の一撃で倒せる程度だから限界溜め撃ちなら一発で撃破できるかもしれない。


……足を止めたから二発、爆発を受けたがバリアで防げた。これぐらいなら一瞬で全弾食らってもバリアを貫通するだけでアーマーを削り殺されることはなさそうだ。全弾食らってやる義理もないしな。


あとは作業だ。丹念に攻撃を避けながら溜めて撃つ。それを四回繰り返した。幸いウッドマンは目論見通りリンク中でも限界溜め撃ちの一撃で倒せた。

双方のリーダーに繋がってる二体ずつウッドマンを撃破した。全滅させないのはこういう手のやつは全滅させると再召喚する可能性があるから。

一体撃破しても再召喚はなかったので全滅がフラグになっている可能性が高いと踏んだ。

おかげで攻撃は大分と減り、大きな回避行動はいらなくなった。

ただ完全に足を止めると威力の高い光線みたいなのを撃ってきて、それだとバリアが持たなさそうなので。


適度に下がりつつ、魔王リーパーに限界溜めレーザーを撃ち込んでいく。もはやこれも作業だけど、あくまでこれは牽制だ。最初の不意打ちみたいな攻撃を誘うための。……まあこれの繰り返しで撃破できるならそれはそれで問題ないし。

何度か魔王リーパーは不明の攻撃をしてきたけど、何も起こらなかった。サポートAIによるダウンロードしたデータによると、それは即死の魔法だったようだ。しかし俺は生きている。MTAのおかげなのか、他に理由があるのかは知らないけど、効かなかった。

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