第5話 装甲勇者

念のため、溜め撃ちでさらに威力を上げ、ウッドマンリーダーを狙い撃つ。一発で吹き飛んだ。リーダーを撃破したら、近くにいたウッドマンが明確に弱体化した。動きも遅くなったし、レーザーライフルの連射で軽く撃破できた。


「砂煙も収まっているな。周辺に敵らしい影は?」


『索敵範囲は半径百mに限られています。その中に敵影はありません』


ん? レーダー半径はもっとあったはずだが、この世界では抑えられるのか? まあその距離で敵がいないなら大丈夫だろう。


いつでも緊急機動できるようにしておきながら、三人の人間らしい鎧姿に近づく。



「ありがとうございました。どこから来られたのですか? 真上から落ちてきたように見えましたが」


三人を代表してか赤くて華奢な鎧姿から若い女性の声が聞こえた。……微妙に答えにくい質問だな。


「……あ~」


どう答えたものか考えていると、続けて聞かれた。



「もしかするとあなた様は、装甲勇者アーマーヒーロー様なのでは?」


アーマーヒーローか。確かゲットしている称号でそういうのがあったはずだ。結構レアらしく獲得条件がいまいち分かっていないとかだった気がする。まあそういう称号持ちだから、俺はそうだとも言えると思うし、肯定した。



「まあ、やはり! 伝説の方とお会いできて光栄です! わたくしはアンスルム王国第三王女のエマと申します」


え? 王女?! 王女がなんで鎧来て前線で戦ってるんだ?!



「我々もアーマーヒーロー様の支援をさせていただきたく」


? 何にだ?


「……どういうことだ?」



「先程のウッドマンは呼び水みたいなもの。おそらく魔王が現れます」



「索敵!」


『敵影は探知できません』


ファンタジー世界だし、こっちのシステムは通用しないのか? 確かに王女がいうように気配は感じるのだが、索敵に引っかからない。



「危ない!」


俺の方に向かって剣を振りかざして飛びかかってくる赤い鎧。


「うおっ?!」


大げさに横に緊急機動して振り返る。



見えたのはいつの間に現れたのか、巨大なウッドマンと言えるような見た目のもの、おそらく魔王に王女が斬りかかり、ひるませている光景だった。赤い鎧の王女様、強いな。


 

『一瞬停止してしまいました。バリア貫通、アーマー損傷は軽微。しかしジェネレータの熱を一瞬にして奪われました。このままだとバリアがしばらく使用できませんし、機動力が著しく低下します。待機中だったサブジェネレータ3のみ無事です。現在非常用バッテリを使用中』


一瞬、魔王の巨大な手に触れられたようだ。王女の援護攻撃がなければ、動けずそのままやられていたかもしれない。


「サブジェネ3起動、メインにまわせ。やられたのはメインジェネレータとバリア用のサブジェネ1、レーザーライフル用のサブジェネ2だな?」


『はい、バリアは無効化され、ジェネレータが発生させていた熱を奪われました。理屈は不明です。再起動により復帰可能ですが再起動に二十四秒かかる計算です』


「復帰するならいい。再起動しろ、全部な。それまではアーマーだけか。いかにこいつでも直撃はやばそうだな」


非常用バッテリはやられなくて助かった。まあこういうときのためのものだからやられてもらっては困るが。

普段は全身がバリアに覆われているが、バリアを貫通されたり、こうやってジェネレータを停止させられると、アーマーだけになる。このパーソナルフォートレスはかなりの重装甲ではあるけど、バリアほどの耐久性はないしアーマーの復活にも時間がかかる。なるべく削られたくはない。胴体を貫通されたら大体パイロット死亡で一撃死だしな。


その場を離れた俺を追いかけて、魔王も音もなくスーッとこちらに寄ってくる。


「目標魔王、ロック、ミサイルランチ、全弾弾幕、ファイア」


両肩に据えていたミサイルランチャーから残った全弾を立て続けに発射する。王女からは離れたので巻き込むことはない。ミサイルは何発かは当たったように見えた。が怯みはしたようだが、ダメージには至っていないようだ。巨大な手でミサイルを受けたようだし、ミサイル爆発の熱まで吸い取ったか?


「あいつのデータはあるか?」


『ジェネレータの復帰および接続変換に容量を取られていました。スキャンを開始します。……【囁く死神】、魔王リーパーと断定します』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る