第4話 ギミック
「あの、あなたは……」
「匿名音声で頼む」
【中の人】のパーソナリティを悟られないように、このゲーム【ミッションブレイク2】には匿名音声というモードがある。外へ聞こえる音声を全て性別すら分からない無機質な合成音声に変換するものだ。プレイヤーの中にはそれで絡んでくるものもいるらしいし、ゲーム的にもNPCへの印象が変わる場合もある。だから一番フラットな匿名音声を俺は便利によく使っている。なんか音声バグってたからこのミッション中はずっとこのままでいいかも。
「話は後だ。敵を片付ける。下がっていてくれ」
外部スピーカで話しかけ、身振りでも制止のポーズを取り、そうしながら攻撃してきたやつを重ロックする。正式名称は忘れたが、こちらがロックしたことを相手にも悟られるロックで、より命中率が上がるが、それを嫌がってロックを振り切ろうとしてきたりするものだ。通常のロックだとこちらがロックしていることはバレないが簡単な機動で振り切られる可能性が高い。まあ要するに、お前を倒す宣言にもなるというものだ。
コラボ先の敵にも通じたようで、向こうも俺をロックしたようだ。こいつらにロックの概念あるのかな? ヘイト? まあなんでもいいや。こっちに敵意が集中した。
敵、ウッドマンはその名の通り、じっとしていけば悪趣味な人の形をした枯れ木のような姿をしている。背の高さは俺のパーソナルフォートレスと同じ三m程度だ。頭部に当たる部分に赤く不気味に光る目らしきものが見える。
攻撃予兆警告が見えた。モーションからでもだいたい分かるがミサイルなどは分からないこともあるから便利で助かる機能だ。
翻訳されるはずなのにどのような意味にも理解出来ない音が聞こえて、ウッドマン複数からこちらに向けて光条が発せられた。
先ほど張ったスクリーンバリアの耐久力が結構減った。爆発系が通じにくいと察したのか? 【ミッションブレイク2】ならよくあることだが、こいつファンタジーな敵だろう? まあ貫通されてないし、どっちでもいいか。雑に前の方にいたウッドマン二体にレーザーライフルを撃ち込む。
ん? 持ちこたえた?! 軽MTAなら一撃で倒せるほどの威力のはずだが。いくら減衰してるとはいえ。さっきも倒せたのに、今度はダメだった。
「分析」
『他のウッドマンと回線のようなものが繋がっています。その影響だと思われます』
「その回線を切る方法は?」
『現在の当機には不可能な手段か、繋がっている大本の相手を撃破するかです。仮にリーダーと呼称しますが、これを撃破すれば回線は途切れ、大幅に弱体化するものと思われます。リーダー自体の防御力はたいしたことがないと推測できます』
俺が踏み潰したのがたまたまリーダーだったか? まあその程度のギミックならあってもおかしくないよな。【ミッションブレイク2】にすらあるギミックだし、ファンタジーならあるあるだろう。
「見分けはつくよな。マーキングしてくれ」
一発でリーダーとそうでないものを見分けられるようになった。先にこいつを撃破すればいいだけだな。後ろに下がってはいるが、レーザーライフルの射線を防げるような陣にはなっていない。
……スクリーンバリア張ってるし、機動戦はする必要すらないな。ここから狙い撃つだけでいけそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます