第2話 ミッションスタート
メンテナンスマンから出撃準備完了の合図があったので、すぐに出撃する。
「ヒジリ、出る」
雰囲気作りもあるのだろうが、このゲーム、自分のプレイヤーネームを名乗って、出るという意味の単語を言わないと出撃できない。ゲームプレイ受諾の最終確認を兼ねているとのこと。……兼ねているということは他の意味もある、ということだ。
なにか違和感を感じる。が、それが何なのか把握できない。まあいいか。
選んだミッションはたまたま出ていた特殊ミッションだ。見たことがないものが追加されていたのでつい選んでしまった。
火力と防御力がかなりいるが機動力はそれほど要らないやつらしい。
この類のミッションは出撃するまでランダムで詳細が分からないやつなので、ハンガーから防御寄りだが火力も載せれるパーソナルフォートレスのフルカスタムを選んだ。
「ぴろん。はーい、プレイヤーネーム、ヒジリ。特殊ミッションの詳細なのです」
なんか始まった。こちらはカタパルトで射出されてそのGで何も感じないし、見えない状況にのりの軽い女の声のアナウンスだ。特殊ミッションの運営からの説明だろう。なによりプレイヤーネームと言って呼んでいるところから明らかだ。ゲーム世界内でのアナウンスではない、ということだ。
「今回はかなり特殊でなんとコラボイベントなのです。コラボ先はファーストギアス。そこで味方を守りつつ敵を殲滅してほしいのです」
このゲームでコラボは珍しい。まあ【ファーストギアス】と同じ開発会社のタイトルだから分からんでもない。このVRゲーム、【ミッションブレイク2】はロボじゃないけどロボゲーだし、【ファーストギアス】はファンタジーMORPGだ。
ブラックアウト状態に近いが、実際に影響を受けているわけではなく演出とロードの都合でそうさせているだけと明言されている状況が解除された。
ん? 空中?!
落ちる! カタパルトからの出撃だったから陸上戦艦からの射出だと思い込んでたが、めっちゃ高いぞ。
「敵は見れば分かると思うのですよ。じゃあぐっどらっく! なのです」
ぐっどらっく、じゃねぇよ! 自由落下状態をなんとか制御して両手両足を広げて空気抵抗を最大限受けるようにした。まだ地上に落下するまでに時間はある。どうすればいいのか一瞬考える時間はあったのは幸いだ。
地上が見えてきた。平野だ。なにかがいる感じだけどまだ詳しくは分からない。詳細を調べている余裕もない。姿勢を制御して足から降りるようにする。あとは、タイミングだ。高さ以外ジャンブしたのと変わりはない、はず。
……いまだ! 一斉に機体各部についている下向きの姿勢制御用アポジモーターを全力で吹かす。宇宙機のものに比べたら随分小型で推力も低いけど、全てを全力で吹かせば! 足にはホバー機動用のアポジモーターもあるしな。このパーソナルフォートレスは機動も一応視野に入れているので姿勢制御にも容量を割いていたのが功を奏したかもしれない。
カタパルト射出は普通ならジャンプみたいなものなのでタイミングは取りやすいのだがな。上から落とすなら最初からそう言っていて欲しい。
ほぼ墜落だったが落ちた地点にクッションがあったようで、燃料を半分以上使ったけど、なんとか故障もなしで着陸できた。立ち上がる砂埃が酷く、しばらく視界がきかないし、レーダーすらホワイトアウトしてしまう。しかしサポートAIが警告を発する。
「敵に囲まれています! 警戒を!」
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