不協和音<3>
正樹は新たに開示されたミッション画面を確認し、次のエリアの情報を共有した。
「第二階層:闇の回廊」
天候効果:深い闇がフィールドを覆い、視界が制限される。
ギミック:光の柱を起動してエリアを照らす。暗闇に潜む敵を排除する為、柱を迅速に操作する必要がある。
[自分]「次は『闇の回廊』だ。暗闇の中での戦闘になるから、光の柱を使って視界を確保しながら進む必要がある。ヒューゴ、ここでも柱の操作が重要だ」
[ヒューゴ]「了解。柱は任せとけ」
[ルナ]「暗闇だと回復のタイミングが取りにくそうだね・・・。注意して動くよ」
[ヒロ]「暗闇だろうが敵の攻撃は全部俺に任せろ」
彼等は次の階層へと足を踏み入れた。暗闇が支配する「闇の回廊」が新たな試練として彼らを待ち受けている。
ギルドメンバー達は暗闇に包まれた回廊を慎重に進んでいた。視界はほとんど利かず、ルナが魔法で作った小さな光の球が唯一の頼りだった。周囲からは奇妙な音が絶えず聞こえ、いつ敵が現れるか分からない緊張感が漂っている。
[ヒロ]「こんなに真っ暗だと気分が悪くなるな・・・早く光の柱を見つけよう」
[ヒューゴ]「待て。暗闇に潜む敵がいる。柱に近づく前に仕留めるぞ」
[自分]「皆、動きを抑えて警戒しろ。まずは敵の位置を確認してから進む」
正樹がそう指示を出した瞬間、周囲が突然揺れ始めた。
【天の断裂が発動しました!】
画面に赤い警告メッセージが表示される。大きな音とともに空間がひび割れ、メンバー達の足元に亀裂が走る。その亀裂は次第に広がり、ギルドメンバー全員が呆気なく異なるエリアに飛ばされた。
[自分]「くそっ、皆無事か?!」
ボイスチャットからそれぞれの声が聞こえてきた。
[ルナ]「わ、私は大丈夫だけど・・・一人になっちゃった!」
[ヒロ]「俺もだ。敵が近くにいるみたいだぞ!」
[ヒューゴ]「くっ、柱が目の前にあるけど、操作する余裕がねえ!」
[ソフィア]「・・・私も孤立してる。でも、このエリアには敵がいない。すぐ動ける」
正樹は一瞬で状況を把握し、全員に指示を飛ばす。
[自分]「よし、全員落ち着け!まずは各自が安全を確保する。無理に動くな。俺が中心に戻る目安を示すから、それを頼りに再合流しよう」
正樹は素早く自身の位置を確認し、チャットに現在地の座標を共有した。
[自分]「ヒロ、敵の注意を引きつけて時間を稼げ。ルナ、遠距離回復で周囲をカバーできる位置を探せ。ヒューゴ、柱の操作は可能か?」
[ヒューゴ]「柱に近いけど、敵がうじゃうじゃいる!一人じゃ無理だ!」
[自分]「分かった、俺がそっちに向かう!ソフィア、ルナを探してサポートしてくれ!」
[ソフィア]「了解、すぐに向かう」
ヒロは孤立したエリアで次々と現れる敵に立ち向かっていた。巨大な盾を構え、仲間達と合流するまでの時間を稼ぐ。
[ヒロ]「こいつら、全然減らねえ・・・!でも俺がやられるわけにはいかねえ!」
盾を叩きつけ、敵の攻撃を引きつけるヒロ。その背中は大きなダメージを受けながらも、決して崩れる事はなかった。
ソフィアは暗闇の中を進み、光の球を手掛かりにルナを見つけた。
[ソフィア]「見つけた。ルナ、大丈夫か?」
[ルナ]「ソフィア!よかった、こっちはなんとか平気。でも、ヒロが持たないかもしれない!」
[ソフィア]「分かった。急いで合流しよう」
ルナの光の魔法が道を照らし、二人はヒロの元へ向かう。
暗闇の中で光の球を頼りに進むルナとソフィア。二人は慎重に足を運びながら、ヒロのいるエリアへ向かっていた。だが、暗闇の奥からかすかな音が聞こえ、ソフィアは剣を抜いて音の方向に目を向けた。
[ルナ]「ソフィア、気をつけて!ここで敵に襲われたらまずいよ!」
ルナが焦りの声を上げるが、ソフィアは静かに応じる。
[ソフィア]「あっちに柱があるかもしれない。先に見てくる」
[ルナ]「待って!今は合流が最優先だよ!敵がいたらどうするの?」
[ソフィア]「私一人なら対処できる。ルナはここで安全に待って」
そう言うや否や、ソフィアは光の球の範囲を超えて暗闇の中に消えていった。
[ルナ]「ちょっと、ソフィア!・・・なんで勝手に動くの!」
ルナはその場に残され、怒りと不安を抱えながらボイスチャットを開く。
[ルナ]「マサ!ソフィアがまた勝手に動いた!一人で暗闇の中に行っちゃった!」
ボイスチャットから正樹の焦った声が返ってくる。
[自分]「なんだって?またか・・・くそ、どの方向に行ったか分かるか?」
[ルナ]「東側っぽいけど、全然見えない!」
[ヒロ]「ソフィア、何してんだよ!俺等、全員で動くって話だろ!」
[ヒューゴ]「マサ、俺が東側に向かう。柱があるならそれを起動するのも大事だ」
[自分]「分かった。ヒューゴ、頼む!ルナ、できるだけその場を離れず、周囲を警戒してくれ!」
暗闇の中、ソフィアは音の正体を追いながら進んでいた。やがて、小さな光を放つ柱が霧の向こうに見えた。しかし、その柱の周囲には複数の敵がうごめいている。
[ソフィア]「やっぱり・・・柱がある。ここを抑えれば有利になる」
ソフィアは迷うことなく剣を構え、一気に敵の群れへと突っ込んだ。闇の中で鋭い斬撃を繰り出し、敵を次々と倒していくが、攻撃の反動で敵の注意を一斉に引きつけてしまう。
「・・・くっ!」
四方から襲いかかる敵の攻撃をかいくぐりながら、彼女は柱のスイッチを目指した。しかし、次第に動きが鈍くなり、追い詰められていく。ボイスチャットにソフィアの息遣いが混じった声が入る。
[ソフィア]「・・・敵が多い。時間は稼いでるけど、少し厳しい・・・!」
[自分]「ソフィア!なんで一人で動いたんだ!今すぐ下がれ!」
[ソフィア]「柱がある。ここを抑えれば役に立てる」
正樹はいら立ちを隠せずに声を上げる。
[自分]「役に立つ為に動いて全滅したら意味がないだろ!今はチーム全体で戦うべきなんだ!」
[ヒューゴ]「俺がそっちに向かってる!持ちこたえろ!」
ソフィアは息を整えながら、静かに答えた。
[ソフィア]「・・・分かった。でも、もう少しで柱を起動できる」
ヒューゴがソフィアの元に到達すると、すぐにギミックの柱を起動。周囲が光に包まれ、敵の動きが鈍る。そこへ正樹とヒロも合流し、ルナがソフィアの回復を急いだ。
[ヒロ]「おい、無茶しすぎだろ!次やったら本当にやられるぞ!」
[ルナ]「もう・・・こんな無茶な行動しないでよ!」
ソフィアは静かに頭を下げた。
[ソフィア]「・・・ごめん。でも、柱を抑えられてよかったと思ってる」
正樹は深く息を吐き、少し落ち着いた声で言った。
[自分]「柱を抑えた事は確かに助かった。でも独断行動が続けばいずれ誰かが犠牲になる。次からは必ず指示を聞いてくれ。それができないなら俺達のギルドで一緒に戦うのは難しい」
その言葉にソフィアは一瞬言葉を失ったが、真剣な声で応じた。
[ソフィア]「・・・分かった。今度は必ず皆と一緒に動く。約束する」
正樹は彼女の返答を聞いて、全員を見回す様にして続けた。
[自分]「よし、もう一度仕切り直そう。俺達はチームだ。全員でクリアする為に動く。それを忘れないでくれ」
ギルドメンバー全員が正樹の言葉にうなづき、再び気を引き締めた。ソフィアの独断行動による緊張感が漂う中、彼女の真剣な返事がその場の空気を少しだけ和らげた。正樹はその微妙なバランスを感じ取っていた。
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