なにげない日常<3>
午後はデータ分析や報告書の作成など、デスクワークが中心だ。美咲は集中して仕事に取り組む。
「この資料を次のミーティングまでに具体的な部分を詰めていかないと」
彼女は自分に言い聞かせるように呟き、必要なファイルを開いた。クライアントから提供された膨大なデータがスクリーンに表示され、数値やグラフが複雑に並んでいる。美咲はエクセルのシートを開き、データをカテゴリ別に分けていく。キーボードを叩く音が心地よいリズムを刻み、彼女の集中力は高まっていった。
オフィス内では、同僚達も各々の業務に取り組んでいる。電話の鳴る音やプリンターの動作音が時折聞こえるが、それらは背景音の様に溶け込んでいた。
「佐藤さん、ここの数値確認してもらえる?」
「はい、すぐに確認します」
美咲は過去数ヶ月のデータを分析し、新しい提案のヒントを探していた。グラフを見つめているとアイデアが次々と浮かんでくる。
その時、隣のデスクから同僚の佐藤が声をかけてきた。
「美咲さん、ちょっといいですか?」
「はい、どうしましたか?」
彼は資料を手に持ち、困った様な表情をしている。
「この部分の数値が合わないんですが、一緒に確認してもらえますか?」
「もちろんです。どれどれ・・・」
二人はスクリーンを見ながら数値を照合していく。美咲は問題点をすぐに見付け出し、解決策を提案した。
「ここですね。データの取り込みミスがあったみたいです。この部分を修正すれば整合性が取れますよ」
「さすが佐藤さん、助かりました!」
「いえ、お役に立てて良かったです」
佐藤が自分のデスクに戻ると、美咲も再び自分の作業に集中した。
15時を過ぎた頃、少し疲れを感じ始めた美咲は、デスクから立ち上がった。
「ちょっとリフレッシュしよう」
彼女はオフィス内に設けられたリフレッシュスペースへ向かった。そこには観葉植物が配置され、自然光が差し込む穏やかな空間が広がっている。壁にはアート作品が飾られ、リラックスできる音楽が静かに流れていた。美咲は窓際のスペースに立ち、軽くストレッチを始めた。肩を回し、首をほぐし、深呼吸をする。
「やっぱり身体を動かすと気持ちいいな」
その時、同僚の田中がリフレッシュスペースに入ってきた。
「お疲れ様です佐藤さん。休憩中ですか?」
「はい、ちょっと息抜きです。田中さんもですか?」
「そうなんです。ずっと座りっぱなしだったので、少し歩こうと思って」
二人は窓の外に広がる街の景色を眺めながら軽く会話を交わした。
「佐藤さんのチーム、順調ですか?」
「おかげさまで。今、新しい提案を進めてるところです。田中さんは今どんなプロジェクトを?」
「新商品のプロモーション企画を進めています」
軽い会話を終えると、二人はそれぞれのデスクに戻るこ事にした。
「もうひと頑張りかな」
美咲は気分がすっきりしたのを感じながら椅子に座り直し、パソコンの画面に目を移す。
周囲の同僚達もそれぞれの仕事に没頭している。キーボードを叩く音や、資料をめくる音が心地よいリズムを生み出していた。
時間はあっという間に過ぎ、気づけば時計の針は17時を指していた。
「そろそろ仕上げないと」
美咲は最後のチェックを行い、誤字脱字や数値の誤りがないか確認した。全てが完璧である事を確認すると、報告書を上司に送信した。
「よし、今日の仕事はこれで終わり」
周りを見ると他の同僚達も帰宅の準備を始めている。資料を片付け、パソコンをシャットダウンして立ち上がった。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様です」
同僚たちと挨拶を交わしながら、美咲はオフィスを後にした。オフィスを出て夕方の街を歩く。空はオレンジ色に染まり、街灯が灯り始めている。
「綺麗だな・・・」
美咲は一瞬立ち止まり、空を見上げた。街灯が灯り始め、街には夜の気配が漂い始めている。通りを行き交う人々もどこか一日の終わりを感じさせる表情をしている。
「そうだ、この景色もSNSにアップしよ」
彼女はスマホを取り出し、夕焼けの写真を撮影した。アップが終わると美咲はイヤホンを取り出し、リラックスできる音楽を再生した。穏やかなメロディが耳に流れ込み、心地よい気分で駅へと向かう。
通りのカフェからは楽しげな笑い声が聞こえ、レストランからは美味しそうな香りが漂ってくる。美咲はそんな街の様子を楽しみながらゆっくりと帰路についた。
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