01-21.破壊の足跡

 進むたびに、崩壊した研究所の内部が彼女の目に映る。焼けげた壁、壊れた窓、床に散らばるガラスの破片。それらは、何者かがここを破壊していった証拠だった。


「誰が……?」


 彼女にはその答えが分からない。ただ、何者かの意志によって、この研究所が崩壊ほうかいしつつあることだけが明確だった。


 途中、げた床の隅で倒れている研究員の姿が目に入った。無表情で横たわる彼の顔は、目を見開いたまま硬直している。何か強烈な恐怖を感じたまま、命を落としたようだった。


 倒れた研究員に近づくことなく、その場を通り過ぎた。冷たい感情が胸の奥でわずかに疼いたが、それが何なのか、彼女には理解できなかった。

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