01-20.解き放たれた瞬間

 扉の隙間を手で押し広げ、ようやく外に這い出た。全身の筋肉がこわばり、動くたびに鈍い痛みが走る。それでも、鉄の箱の中に閉じ込められていた彼女にとって、この開放感は圧倒的だった。


「ここは……」


 コンテナの外に出た彼女の目に飛び込んできたのは、くずれ落ちた壁や火花を散らす機械装置の残骸ざんがい。床には研究員たちが捨て置いたように散乱さんらんした資料や器具が転がっている。


 その中で、明らかに異様な気配を感じた。空気にはげた金属と薬品の混ざった匂いがただよい、遠くからまた別の爆発音が聞こえてくる。

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