01-17.廃棄場での孤独
彼女は鉄製のコンテナの中に身を縮め、冷たい金属の感触に身を預けていた。廃棄場は無機質で、どこまでも冷たく、暗闇に沈んでいる。鉄の壁に響く音は、羽音のように不安定で、彼女の心の中の不安を増幅させる。もう何日もここで過ごし、孤独に耐えてきた。
この場所は「失敗作」のゴミ置き場だと、彼女はすでに知っていた。何もかも無意味に見える。生きている意味も、何もかも。希望などという言葉すら、今では無力に感じられる。
時折、翼が不安定に震え、彼女の背中に鋭い痛みを引き起こす。あの女性研究員の優しさが頭に浮かぶ。その顔が、暗闇の中でも明確に思い出せる。それでも、なぜここにいるのか、どれほど考えても答えは出てこない。
「私は、何のために生きているの?」
その問いかけが、心の中で反響する。だが、答えは返ってこない。すべてが無駄で、痛みだけが続く。やがて彼女は目を閉じ、その心の中で彼女に優しく絵本を読んでくれた女性研究員の姿を思い浮かべた。
「あなたは生きるの」
女性研究員のその言葉が、何度も心に響く。しかし、彼女はもうその声を聞くことはない。あの温かさを感じることはできないのだと、痛いほどに実感していた。
彼女の記憶の中で、あの女性研究員が絵本を読みながら
その時、ふと何かが彼女の視界に入った。周囲に散らばる無数の破片の中に、何か光るものが見えた。弱い光が微かに反射している。それを見つけた瞬間、彼女は身を起こしてその光源に近づく。
それは、ひときわ目立つものだった。金属の筒のような形をしたカプセルで、その中に何かが収められているようだった。彼女は不安そうにそのカプセルを手に取った。ガラスのように透明なカプセルの中に、何かが安置されている。その内容に触れることができず、ただその存在が彼女の目に映る。
カプセルの表面には、名前が書かれていた。それは、彼女にとって見覚えのある名前だった。
「ミラ……」
その名前を呟いた瞬間、一瞬で全てを思い出した。ミラという女性研究員は、彼女に何度も絵本を読んでくれた。あの優しい声で、物語を語りかけ、心を癒してくれた人物だ。その優しさが、今でも彼女の心に残っている。
「あなたは生きるの」
その言葉を思い出し、彼女はカプセルをそっと抱きしめた。暗闇の中で、カプセルを抱きしめる手が震えた。その中身が何であれ、分からなかった。しかし、彼女はそれがミラのものであることを確信していた。
カプセルをしっかりと握りしめたまま、彼女は再び暗闇に囲まれていた。絵本を読んでもらったあの夜のことを思い出し、目を閉じる。
「ミラ……」
その名前を心の中で何度も繰り返す。彼女はその優しい声が聞こえるような気がして、静かに目を閉じた。泣くことすらできず、ただひたすらにその温もりを感じようとする。
「私は生きるために、何をすればいいの?」
そうつぶやきながら、再び暗闇の中で眠りについた。
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