01-14.身体への負荷

 実験が進むにつれ、彼女の身体は限界に近づいていった。翼の広がり具合を測定するために、無理な力が加えられる。筋肉が引き裂かれるような感覚に襲われても、研究員たちは全く気に留めなかった。


「反応が遅いな。これでは使い物にならん」


「それどころか、不安定だ。見ろ、この振動を」


 翼の先端せんたんが微かに震えているのを見て、研究員たちは顔をしかめた。その震えは、彼女が限界を迎えている証だったが、彼らにはただ「欠陥けっかん」にしか見えなかった。


「次の段階に進むぞ」


 研究員の一人がそう言うと、彼女の腕に注射を打った。すぐに体中が熱くなり、視界がゆがむ。翼が不自然に広がり、彼女は悲鳴を上げたが、誰も耳を貸さない。

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