01-13.冷酷な評価

 ある日、彼女は研究所の中心部にある明るい部屋へと連れて行かれた。その部屋は、これまでの暗く狭い空間とは異なり、壁一面に計器けいきやディスプレイが並び、白い光が無機質に輝いていた。


「今日が評価の最終段階だ。これで使い物になるかどうかが決まる。」


 研究員の一人が冷たくそう告げた。彼女の体は機械の腕で固定され、背中の翼が無理やり広げられた。翼を動かそうとするが、おさえつけられるような痛みが走る。


「翼の展開速度、筋力の反応を確認。次に治癒ちゆ能力を測定する」


 研究員たちは無表情で彼女を見つめている。その視線には、まるで彼女がただの物体であるかのような冷たさしかなかった。


「痛みを感じるのか?」


 一人の研究員が意地悪そうに笑いながら彼女に尋ねた。しかし、答えを期待しているわけではない。別の研究員がすぐに言葉を遮る。


「感覚はあるだろうが、実験体にとってそれが何かは分からない。ただの刺激だ」


「そうだな。痛みを感じても、それを伝える意味が分からないんだろう。結局、道具にすぎない」


 彼女の心には、その言葉が冷たい刃物のように突き刺さった。しかし、それを口に出すことはできなかった。

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