01-07.翼の痛み

 数日後、彼女は実験台に拘束こうそくされる。冷たい金属の感触が肌を刺し、背中には翼を固定するためのベルトが締められていた。


「自主制御テストを実施します」


 冷たく響く研究員の声。背中に鋭い痛みが走ると同時に、体全体が震えた。彼女は何かを叫ぼうとしたが、のどが乾きすぎて声にならない。


 背中に生えた翼は生きているかのように痙攣けいれんし、彼女の意思とは無関係に動いた。それが自分の体の一部であるという実感はなく、むしろ異物としての恐怖を彼女にえ付けていく。


「神経接続は部分的に成功。しかし、完全制御は不可能と判断される」


 研究員たちは彼女の反応を記録し、データを淡々と書き込む。その間も彼女の痛みや恐怖に一切関心を示さない。背中で動く翼は、もはや彼女自身の一部であるというより、彼女を苦しめるためだけに存在する異物だった。

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