01-03.研究所の摂理

 彼女が閉じ込められている研究所は、表向きは先端技術研究機関を装っていたが、その背後にはある思想団体の存在があった。その団体は「摂理せつりの救済者たち」と呼ばれ、滅びゆく世界を救おうとする理念をげていた。


 長引く戦争や環境破壊、社会の崩壊ほうかいによって荒廃していく世界を前にして、彼らは結論に達した。それは、人間という存在が自らの弱さによってこの星を破壊し続けているというものだった。彼らの考えでは、感情や欲望に左右される人間の判断はあまりにも不安定で、致命的な過ちを繰り返しているとされた。


 そこで団体は、完全なる存在を創造し、その存在に全ての決定権をゆだねることで、人間の誤った選択を防ぎ、世界を救済しようとしたのだ。その「完全なる存在」こそが天使――彼女だった。

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