01-02.異様な実験の始まり

 彼女が目を覚ましたのは、研究所の地下フロアだった。壁に沿って並ぶ計器類が赤や緑のランプを点滅させ、管が縦横無尽じゅうおうむじんう。モニターには何かのデータが途切れることなく流れていた。透明なガラス越しに見える研究員たちの白衣は、冷たく無機質むきしつな存在感を放っている。


「対象014号の覚醒かくせいを確認。自主神経反応はまだ不安定」


 無機質な声が彼女の耳に届いたが、その意味を完全には理解できない。ただ、その声に込められた無関心さだけがするどく心に突き刺さる。


 研究員たちの視線はモニターに注がれ、誰一人として彼女を人として認識している気配はなかった。彼女がふるえる声で助けを求めても、ただ記録を取るだけの存在。彼らにとって、彼女はただの「対象」であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。

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