廃棄物14号

鈑金屋

第1章: 捨てられた天使

01-01.冷たい空間

 薄暗うすぐらい空間に蛍光灯の光がちらつき、天井から垂れ下がるびついた鎖が冷たく揺れている。床には無造作に散らばる金属片や割れたガラスの破片、薬品の空き瓶。空気に漂うのは薬品の刺すような匂いだ。冷たい機械音と静寂が混じり合い、異様な静けさが部屋全体を包んでいた。


 彼女がゆっくりと目を開けると、視界はぼやけ、頭が重い。手足は鉛のように動かず、起き上がることすらできない。目の前の白い天井に浮かぶ薄汚れた光のパターンがじっとりとした孤独をさらに強調している。


「……ここは……?」


 かすれた声がのどかられる。その音すら自分自身のものだと思えないほど弱々しい。

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