01-04.完全なる天使の構想

 団体の思想は、完璧な天使の創造に全てを賭けていた。天使は感情に左右されず、倫理的りんりてきにも正しい判断をくだす存在であるべきだった。また、人間が抱える脆弱性せいじゃくせいや不完全さを超越ちょうえつした肉体と能力を持ち、絶対的な調停者ちょうていしゃとして機能することが求められていた。


「天使は神の代行者となり、人間の代わりにこの星を救うべき存在だ。人間が抱える矛盾と衝突しょうとつを解決し、世界を新たな秩序にみちびく」


 そうした理念のもと、研究所は天使の創造に乗り出した。彼女の背中に広がる美しい翼や、人知じんちを超えた治癒ちゆ能力はその成果の一つだった。しかし、それは人間を救済するための武器であり、道具に過ぎなかった。

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