第18話 駄目なお義母さん

◆◆◆◆


 俺が使っていたハンドタオルが地面に落ち、それから少しして灯里さんの持っていたバスタオルがひらひらと羽のように風に舞いながらゆっくりと地面に落ちた。


 灯里さんは俺の首に両手を回し、俺は灯里さんの首と腰に両手を回している。俺と灯里さんは、腹と腹……そして胸と胸が隙間なくくっつき、豊満な灯里さんの胸が俺の胸板でぐにゅりと潰れている感触が伝わってくる。

 

 俺は一瞬思考が停止し、灯里さんのことを強く抱きしめてしまった。


 灯里さんは俺の耳元で「んんっ♡」 という色っぽい喘ぎ声をあげる。それと同時に我に返った俺は抱きしめる力を緩めて「ご、ごめんなさい。」と謝った。


 灯里さんは俺を抱きしめる力を強め、俺の腰に足を回し、木にしがみつくコアラのような体制でガッチリとホールドする。


「これで、はずかしくないれしょ? らっれ、わらしのはだかみえないもん。」


 確かに灯里さんの言うように、この体制だと灯里さんの裸は見えない。しかし、あまりにも生々しい感触が全身を駆け巡り、裸を見るとか見ないとかの騒ぎではない。灯里さんの腰に回していた手を解いて、脚のロックを外そうとするが、ものすごい力を込めているのか全く外せそうにない。


「灯里さん、この状況は流石にマズいです。離して下さい。」

「やぁら~。だいちといっしょに、おふろはいる~。」


 俺と一緒に、お風呂に浸かっていたいという灯里さんの言葉を無視して、脚のロックを外そうと身体をくねらせると、灯里さんの口から聞いたこともないような嬌声があがった。


「あっ♡ あぁんっっ♡ んんっ♡」


 灯里さんは俺の首筋に噛みつき「んー♡ んふー♡ んふー♡」と呼吸を荒げながら声を抑えた。そして落ち着いたかと思うと俺の首筋から唇を外して話す。


「いま、うごかれると、ちくびとあそこがこすれれ、へんなこえでちゃう。」


 確かに、俺の胸元に感じる柔らかな感触の中央辺りに、コリコリと強く主張する箇所がある。


 さらに、胸の感触に意識が囚われていて気が付かなかったが、痛いくらいに大きくなっている俺のアソコの裏筋に、ヌルヌルとした何かが吸い付くような感触がある。


「うごかなれ、はいっちゃう……。」


 灯里さんの言葉を聞いてハッとした俺は、暫く灯里さんと抱き合いながら石化したかのように動くことが出来なくなかった。


 灯里さんは俺が動かないのを良いことに、自身のアソコを俺のアソコの裏筋の根本にあてがい、ゆるゆると先端まで擦り上げた。まるで、自分のアソコを俺の裏筋に擦り付けて、マーキングでもするかのように何度も何度も繰り返す。いわゆる素股という動きだ。灯里さんが動くたびに、露天風呂にのお湯が揺れて波を作った。


 俺は「灯里さん、駄目。」と言って、灯里さんの腰を腕で押さえつける。


◆◆◆◆


 灯里さんとどのくらいの時間抱き合っていたのだろう。ほんの5分くらいの気もするし1時間近い気もする。俺にとって刺激が強過ぎて、時間感覚が麻痺している。灯里さんは少し前まで俺の首筋に噛みつき、腰や身体をくねらせて「んふー♡ んふー♡」と息を荒げていたが今は落ち着いている。

 

 定期的に灯里さんの背中をトントンと叩き「灯里さん、大丈夫?」と声をかけていたのだが、 初めの内は「ん~。」と、意識が曖昧な感じの返事のみだった。しかし、何回か繰り返す内に「うん。」と意識がはっきりとしているような返事が返ってきた。


「灯里さん、もうそろそろ上がらない?」

「もう少し待って、それに、大地ももう少し一緒に入っていたいでしょ。」


 少しだけ図星だった。灯里さんと暫く抱き合っている内に、灯里さんの感触やアルコールの中に香る甘い香り、そして規則正しく鳴り響く灯里さんの心音が心地よく、ずっと灯里さんのことを抱きしめていたいと感じていた。しかし、俺の理性は”今の状況はマズい”と警報を鳴らし続けている。


「そ……そんなことないよ。」


 灯里さんは甘えるような声色で、俺の耳元で囁いた。


「嘘つき。だって、私のお腹に硬いのが当たっているわよ。」

「こ……これは生理現象で……。」

「へー、じゃあ大地は、私以外の人とこういう状態になっても大っきくしちゃうのか~。」

「い……いや、そういうわけではなくて……。」


 灯里さんは俺の耳に唇をピッタリとくっつけて囁く。


「じゃあ、どうしてなの?」

「……。」


 俺は灯里さんからの質問に答えられず、まごまごしていると灯里さんが消え入りそうな程小さな声で話し始める。

 

「ごめんね……大地……こんな駄目なお義母さんで……。」

「灯里さんは俺にとって、最高のお義母さんだよ。」

「そう言ってもらえると嬉しいのだけれど、本当は駄目なお義母さんなの。」


 灯里さんが肩を震わせる。灯里さんの声色から感情が消え、初めて出会った時のようだ。


「夜空さんから『大地の実の母です。』って連絡を受けて、初めて直接、彼女と合った時、しっかりとした人だなって感じたの。でも、大地と夜空さんを会わせることについて一瞬ためらってしまった……。」


 俺を抱きしめる力が強くなる。


「夜空さんに、『貴方のことを取られてしまうのでは無いか』と思うと怖かったの。実のお母様と貴方の問題が解決することは、大地と夜空さん、2人にとって幸せなことだと頭では分かっていたのに……。」


 俺の背中に灯里さんの爪が食い込む。まるで、灯里さん自身を俺に刻み込むかのように……。


「さっき、大地が『彼女が出来た』って冗談を言った時もそう……。私は貴方のことを思っている振りをしているけれど、本当は、大地のことを誰にも渡したくないだけ……。」


 そして、本当に灯里さんが話しているのか……それとも別人なのか……判別がつかない程冷たい声で囁く。


「実はね……何度も考えていたの……。貴方のことを誰かに奪われるくらいなら、私が貴方の全て奪ってしまおうか……って。貴方の心も身体も……初めても……全部……。」

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