3/4話
そしてある日事件は起こった。
朝のホームルーム。
「篠沢美佳さんは体調不良のため、しばらく学校を休むことになりました。メンタルの問題ですので、復帰しても詮索せず、気持ちよく迎えてあげて下さい」
クラス担任がそう告げる。
一瞬だけクラスがざわついたが、それから何事もなく出欠を確認して授業が始まった。
一限が終わり、私は佐倉さんに聞いてみた。
「ねえ、篠沢さんと何かあったの?」
Easy Photoをきっかけに仲良くなった二人ではあったが、ここ最近はそれほど話している様子を目にしなかった。
「あー。まぁ……なんかあった、といえばあったかな」
「どうしたのよ?」
「んー」
言いにくそうだったが、佐倉さんはすぐに、
「あいつのフォロー外した」
「え!?」
気だるそうにスマホを操作しながら、
「画面に出てきたんだよね『篠沢美佳さんのフォローを見直しませんか?』って。んで診断アプリに入れて検討した結果、相互から外したわ」
診断アプリとは、最近Easy Photoを作っている会社がリリースしたもので、Easy Photoと自動連係して、今の自分に適切なフォロワーを判定してくれる。
人数が増えてくると、相互関係にあるフォロワーをチェックするのは面倒だ。
だから診断アプリをインストールしておけば、定期的に『今の自分に不要なアカウント』を発見でき、設定によっては自動で相互解除することもできるようになる。
「私のフォロワー、もう10万超えてるんだよね。美佳は5万から伸びないし最近の投稿も全然バズらないし。この間テレビ局のディレクターさんから『佐倉さんの相互フォロワーを紹介する企画をしたい』って言われてさ。ま、あっちが私をフォローしてるのはお好きにどうぞってカンジだけど、もう美佳のアカウントに価値はないかなーって」
佐倉さんをフォローしている人数は10万人。
その中の50人弱が彼女と相互関係にあるフォロワーだった。リストを見せてもらうとみんな10万前後で、中には有名な芸能人もいる。
「美佳だって、松崎さんを簡単に切ったじゃん? それに私はもともと美佳と仲がよかったわけじゃないから、別にいいかなって。……まぁちょっと悪い気はするよ? でも高校だって何年もいるわけじゃないし、きっと進路も違う。そんな気にしなくてもいいかなーって」
その時、佐倉さんのスマホの通知が鳴る。
「あ、配信者さんからの通知だ。今度コラボしましょうって」
その後も佐倉さんは楽しそうにスマホの通知音に反応してはメッセージを返していく。
やがて一限目の教師が入ってくると授業が始まる。
その間も佐倉さんは教科書に隠したスマホをずっと操作していたのだった。
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