第十一章:決戦

 ニールとクラムスの激突は、晴翔の部屋の空間を歪ませていた。


「クラムス!闇では人を導けない!」

 ニールの手に握られたリフレクターは、純白の輝きを放ち、クラムスの黒い鎖を何度も弾き返していく。


「それでは勝てないぞ!」

 クラムスはさらに闇の力を解放した。

「晴翔は何の取り柄もない人間だった。俺が解放してやったんだ!」


 クラムスの言葉とともに、黒い波動がニールに向かって押し寄せた。ニールはリフレクターで防御を試みるが、闇の力の前に、彼の身体が蝕まれていく。


「クラムス、なぜそこまで闇を求める……」

 ニールは必死に反撃するが、その声は次第に弱っていった。


 戦いが続く中、晴翔はただ呆然とその様子を見つめていた。何をすべきなのか、まったくわからなかった。


「ニール……頑張れ……!」

 晴翔は祈るだけだった。


 ついにクラムスの攻撃がニールのリフレクターを砕いてしまう。その破片が宙に舞い、ニールは膝をついた。


「……ここまでか……。」

 輝いていた光の体も弱まり、クラムスが勝利を確信したように歩み寄る。


 しかし、ニールの目にはまだ揺るぎない意志が宿っていた。

 ニールはうつむきながら、静かに口を開いた。


「確かに、光だけでは人を導くことはできないのかもしれない。お前の言う通り、闇も必要かもな。」

 ニールは視線をクラムスに向けた。

「だが、このままお前が晴翔を支配すれば、晴翔は自らを滅ぼしてしまう…」

「クラムス。それほどの闇は太陽の光だけでは維持できないよな。

「私をリフレクターに閉じ込め、お前の近くに置いたのは光が必要だからだな。」

「ならば………」


 クラムスの表情が強張る。

「お前は自分の存在そのものを消すつもりか?守護神の規則を破るつもりか?」


 ニールは静かに微笑んだ。

「私の役割は、晴翔が真に成長する手助けをすることだ。」


 そう言うと、ニールは床に落ちたリフレクターの破片を拾い上げ、自らに向けた。晴翔が慌てて声を上げる。

「だめだニール!もっといい方法が……」


 ニールは振り返らなかった。晴翔に最後の言葉を残す。

「いつまでも本当の晴翔を忘れないで。」

 ニールは続けて言った。

「クラムス…晴翔の事、頼むぞ………」


 リフレクターの破片がニールを包み込むと、彼の体は砕け散り、クラムスの中に吸い込まれていった。クラムスは目を見開き叫び声を上げる。

「うわゎゎゎゎ……!」

 光と闇が一つに融合し、まばゆい輝きで満たされた。


 光が収まると、雰囲気が変わったクラムスが立っていた。彼の体は光と闇のエネルギーが調和していた。


「これが光……」

 クラムスは忘れていた感覚に包まれていくのを感じた。


 晴翔は涙を流しながらその場に崩れ落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る