第五章:覚醒

 そんなある日、事件が起きた。放課後、由香が不良グループの上級生たちに連れ去られたのだ。

 人気者で活躍する晴翔が気に入らなかったのだ。

 由香を利用して誘き出し、罠にかけようとしたのだ。


 クラスメイトの文人が走って晴翔に近づいてきた。

「晴翔ーっ!由香が下校時に先輩達に囲まれて連れて行かれた!賢太が見たって!」

晴翔の怒りは爆発した。

「あいつら…!」


 クラムスの協力で、晴翔はすぐに上級生が潜んでいる倉庫をを突き止めた。そこで上級生たちを見つけた。


「由香はどこだ!」

 晴翔の声には冷たい怒りそのものだった。

「なぜ、お前がここにいるんだ!」

 グループのメンバーが言った。

 作戦を立て周到な準備をしてから晴翔を誘き出すはずだった。

 何も準備がない状態で晴翔が現れ、動揺が隠せなかった。


 クラムスが耳元で囁く。

「こんな非道な奴らに遠慮はいらない。お前なら簡単に叩きのめせる。」


 晴翔はクラムスから学んだ、ゆっくりで隙のない独特な武術を駆使し、上級生らを次々と打ち倒した。

 恐怖で震える上級生らを前に、晴翔は薄笑いを浮かべた。

「次はタダじゃ済まねぇぞ!」晴翔は吐き捨てるように言った。


 そして、倉庫の奥に由香を見つけ出した。


 由香の目に映る晴翔は別人だった。由香は震える声で号泣しながら言った。

「晴翔くん…どうしちゃったの……」

 由香は泣きながら一言も喋らなかったが、晴翔は由香を家まで送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る