第三章:最高の自分

 クラムスのアドバイスを受けるたびに、彼の能力は目に見えて向上していった。

 学年トップの成績を収め、部活動ではレギュラーに選ばれるほどの実力となった。

 話も面白く晴翔の周りには笑い声が溢れ、「人気者」となっていた。


「お前最近どうしたんだよ!」

 部活の仲間たちが口々に言うたび、晴翔は胸の奥が温かくなるのを感じた。

 ずっと憧れていた姿だった。


 その変化を一番に気にかけていたのが由香だった。距離は徐々に縮まり、ある日、意を決して放課後の教室で彼女を呼び止めた。


「由香……あの、ちょっといいかな?」

「うん、どうしたの?」由香は柔らかな笑顔を向けてくる。


 緊張で声が震えながら、なんとか言葉を続けた。

「その…俺、ずっと由香のことが気になってて…もしよかったら…付き合って下さい。」


 教室に静寂が訪れる。

 由香は驚いた表情を見せたが、恥ずかしそうに小さく頷いた。

「うん……よろしくね。私も……ずっと晴翔くんの事が気になってたんだ。」

 その瞬間、晴翔の心は喜びで満たされた。

「ん?ずっと…?」晴翔が微笑みを浮かべた。

 たぶん、晴翔の「ずっと」という言葉に引っ張られて言い間違えたのだろう。

 由香は恥ずかしそうに下を向いていた。

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