第一章:クラムス

「守護神?」

 晴翔は呆然とした表情で小さな存在を見下ろしていた。

 部屋の薄暗がりの中、クラムスと名乗るその小人の体は淡い水色の輝きを放っている。神秘的な姿に、晴翔は目を奪われた。


「そうだ。」

 クラムスはふわりと宙に浮かび、晴翔の目の前まで近づいてきた。まるで親友に話しかけるような気軽さで言葉を続ける。

「お前がこれまで平穏無事に過ごせたのも、俺が見守ってたおかげってわけだ。感謝してくれよ。」


 晴翔は信じられない気持ちでクラムスを見つめた。これは夢だ、と思った。きっと疲れてるからだ。


「お前、青い花に水やってたよな。一日何回も。あれな、ちょっと多すぎだぞ。」


 ただ自分の癒しのためだけに続けていた習慣。一度も水をやりすぎてるなんて思ったこともなかった。どうやらクラムスは日常の様子を全て見ていたようだ。


「…本当に、君は俺の守護神なの?」


「信じるかどうかは勝手だが、俺がここにいる理由は他にない。」クラムスは続けて言った。

「お前には伸びしろがある。俺が手を貸せば、もっとすごい奴になれる。」


「すごい奴……?」


 晴翔は思わず聞き返した。


「そうだ。勉強だろうがスポーツだろうが、俺がアドバイスすればな。」


 晴翔の心の奥で、その言葉を信じたい気持ちが芽生えてきていた。

 目の前に見えるクラムス。これは現実だ。言っていることも本当かもしれない。


「……やってみたい。自分を変えたいんだ。」


 クラムスは笑みを浮かべた。


「明後日の数学テストから始めてみよう。」

 その後、なぜか意識を失うようにベッドで寝てしまった。

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