リフレクター:インシデント1992

安川たけし

プロローグ:不思議な出会い

 片切 晴翔(かたぎり はると)は平凡な高校2年生。誰にでもとても優しい性格だったが、学校では目立つわけでもなく、特別な才能があるわけでもない。机の上の鉢でブルーデイジーを育てるのが、唯一の癒しだった。

 その日も、晴翔はいつものように自分の部屋の机に座り、鉢の花に水をやりながらぼんやりと窓の外を見ていた。どこにでもあるような田舎町の景色が広がり、風が枯れ葉を巻き上げている。「今日も面白いことはなかったな……」と、晴翔は小さく息をついた。

 夜になり、苦手な勉強に疲れた彼はベッドに寝転がった。薄暗い部屋に、机のスタンドライトだけがぽつんと灯る。その静けさを破るように、突然、どこかからカサリ、と微かな音が聞こえた。


「…本棚?」


 晴翔は本棚の方に目を向けた。本が少し動いた程度とわかっているのに、鼓動が高鳴っていた。

直後、再び音がし、今度は眩い光が晴翔の目に入り、思わず目を閉じた。


「なんだ?」

 目を開けたとき、そこには信じられないものが目に入った。水色に輝く人の手の大きさ程の小人だった。晴翔は驚いてビクッとした。


「やっと会えたな、晴翔。」

 高く透き通った声が聞こえる。晴翔は呆然としながら、その存在を見つめた。


「君は、何なんだ?」

 その小人は堂々と答えた。


「俺の名前はクラムス。お前を守る守護神だ。」

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