【カクヨムコン参加】君のための魔王になりたい

肥前ロンズ

Hello, World!

ミミックに転生したんですが

はじまり、はじまり

 カタ、カタ、カタ、カタHカタeカタ、カターン、カタ、カタlカタ、カターン、カタ、カタlカターン、カターン、カターンo

 広い洞窟の中で、俺が鳴らす音が響く。


 何度繰り返したことだろう。

 こうやって通りすがる人、通りすがる人に、ひたすら音を鳴らし続けた。

 だが、ほとんどの人は……って言っても、ここにたどり着く人なんてほとんどいないけど。まあいい。

 ほとんどの人は、俺の存在に気づいても、無視して通り過ぎて行くだけ。

 

 だけど、その人だけは違った。

 フードを被った少女は、俺の前に立ち、俺を見下ろしている。

 

 初めて、俺の前で足を止めた異世界人。

 

 ベージュ色のフードの下からは、黒い髪が零れていて、青い瞳は洞窟の壁に生える水晶のようだった。

 彼女は真面目な顔で俺を見つめ、そして呟いた。

 


「Hello……?」



 耳なんてないのに、鼓膜が震えたような気がした。

 いや――震えたのは、身体の全てかもしれない。


 その人は、俺がひたすら送っていたメッセージを口にした。



 こうして俺は、異世界に転生して初めて、誰かと話すことができた。

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