第2話 失恋リニア

 さて今日も送り出したし、主人のお部屋を片付けるぞ!

「う、うおおおおおおお、やるぞおおおぉおお」



 ピンポーン

「ん?ご主人忘れ物か?」

 ガチャ

「こんにちは。」


 目の前に現れたのはモナリザ、いやあの新型お世話ロイドだった。


「どどど、どうしたんですか?わざわざご挨拶に来てくださったんですか?」

「いえハルト様のことをお聞きしたくて…。」

「え?ご主人がどうかなさいましたか?」

「実は私…。」


 なんだろう、これ嫌なパターンな気がする。

 こういうときって大体あれだよね、主人のこと好きになっちゃましたーみたいな!

 まだ君の名前も知らないのに!待って!

 裏切りパターンであれ!

 裏切ってくれ頼む!


「私、ハルト様に一目惚れしてしまったんです。」


 表だあああああああああああああ


「ハルト様のご尊顔、傾国顔?なんですけど、学生らしい可愛らしさもあるといいますかなんというか、云々Cannes…。」


 ………。

 何か喋ってる気がするけど何も聞こえない。

 というかこんなに喋るんだ…。

 

「なのでハルト様の部屋を拝見しますね。」

「え?ナニ?」


 ─ダッ、ダダダダダダダダダ

 は、速い、討ち入りか!?


「いや、ちょっと待って!これから片づけなの!まだ脱ぎたての服とかあるから!」

「それは、最高です。」

「さ、最高!?最高なの?」


 そう言ってる間にも猛進し、彼女は主人の部屋にたどり着いた。


 ガチャ

 サッ

 スッ


「まず深呼吸して確認させて頂きます。」

「どうして、主人のパジャマの匂いを確認する必要がありますか?」

 ─ スーーーーーーーーーハーーーーーーー

「これが、ハルト様の香り…。」


 そう言いながら、しばらく彼女はその匂いを嗅いでいた。

 主人の部屋のド真ん中、ベッドと机の間に佇む彼女は、朝の陽ざしに照り映えていた。

 なんて綺麗なんだ…横顔も素敵すぎる…。

 いや、違う。


「部屋片づけなきゃだし、君もお仕事あるでしょ?」

「いえ、全てつつがなく出発前に済ませました」

 最新…くそぉっ...。


「それより欲しいものがありまして、ゴミ箱失礼します」

 ─スッガガガガッガッサッササ

「あ、ハルト様の塊を発見。」

「そ、それは!」

 主人の使い終わったティッシュの塊!主人は年中鼻炎でティッシュの消費がすごいんだ。


「それを、一体どうするつもりなんだ!?」

「まぁ回収も終わったのでね、帰りますけども。」

 〆始めた!?


「待って、一方的すぎない?

 まずロボット同士話し合って仲良くとか、なんか常識が無さすぎるというか」

「この時短時代に何言ってるんですか?」

 ロボットとZ世代のハイブリット倫理観!これが最新だって言うのかい!?


「まぁそれなりに片づけが行き届いて、曲りなりにもお世話ロボなんですね。

 では、失礼します。」

「待って!ありがとう!いや、待って!待ってください!」


 僕は君が…君と…。

 手を伸ばしても虚しく、君がどんどん遠くなっていく…。

「名前…教えて…」

 バタッ。



 ─────

「採取完了…っと。」

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