第5話 僕が使い魔召喚をした理由
泣き崩れる少女を前に僕は居た堪れなくなって、一旦家に引っ込んでワイシャツを持って戻り彼女の肩へ掛けた。
「え?」
「此処は人目に付きにくいとは言っても外だから」
「あぅぅ……」
なるべく姿を見ないように彼女の腕を引いて家に上げる。
彼女がちゃんとワイシャツを着たところでリビングのソファに座ってもらい僕は対面に座り、
「改めて、ミアさん……で、いいんだよね?」
「はい。ミア・アグレイスです」
「僕は
「え……えと、よ、宜しくお願いします……」
差し伸べた手を彼女はしどろもどろに握り返してくれた。
表情には出さないように彼女の手の小ささに少し驚いていると、
「あの、マイト様」
「様っ!? い、いや普通に舞斗さん、でいいよ」
「い、いえ……あな、マイト様はわ、わ私のご主人様、です、から……」
いきなりの様付けに呆気にとられる僕に、またしどろもどろな様子のミアさんの説明で合点がいって申し訳なくなってきた。
「ごめん。ミアさんっ! 僕はあくまで犬や猫を想定していたんだけど、まさか君みたいな美少女が召喚されるとは思わずっ!!」
「はぅっ、び、びしょ……わ、私が……?」
全力の謝罪に対し真っ赤になった顔を両手で覆い隠してしまったミアさん。
と、とにかく僕が召喚した理由の説明を続けることにしよう。
「僕は小さい頃からラノベに出てくる使い魔に憧れていたんだ」
「ラノベ? ですか」
「うん。【自分の為に尽くしてくれる使い魔】に憧れていたけれど、僕の本当に欲しかったものは僕の存在を認めてくれる特別な存在なんだ」
「マイト様の、存在を……?」
ミアさんの僕の呼び名は取り敢えずスルーさせてもらう。
「そう。僕は両親からいないものだとされて育ったから」
「え?」
ミアさんの眼が信じられないと言わんばかりに大きく見開かれた。
「冗談でも何でもなく、家の鍵と食事代後は月のお小遣いを渡すだけで、いや、流石に教育関連の事には少しだけ係わって――本当に何もしてくれなかった」
挨拶も、食事の用意も、大袈裟に言ってしまえば僕自身の安否さえも全く気に留めることなく、僕の手が離れて以降(つまり僕があらかた何でもできるようになってから)ずっと
「あ、あの……では、マイト様の御両親は今?」
その問いに僕は自虐的な笑みで吐き捨てる――
「父さんの単身赴任に母さんも付いて行ってもう四年間音沙汰なしだよっ!」
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