第4話 ミア、さん……?

 背中を突かれたってことは彼女むこうから話しをしたいって送られた合図なのは解るけれど――


「振り向けねぇーっ!」

『っ!?』


 急に叫んだ所為で相手が驚いたであろうことは見なくたって想像がつく。

 ただ、で振り向くには勇気が必要な訳で……勿論、彼女も覚悟を持って接してくれようとしていることだって解っている……。


「うっ!」


 再び突かれる背中。心なしか突いてくる指の力が若干強い。

 大きく息を吐いて体ごと振り返ると、


「『あ』」


 前に乗り出す形でお互いの目が合ってフリーズしてしまった。


 間近で見た彼女の顔はあどけなさを残しながらも整っていて、何よりも大きく澄んだ紫色の瞳が魅惑的なアメジストのように綺麗で思わず呆然と見惚れた。


『あ、あの……』

「~~っ!?」


 彼女の声で我に返って……再び凍りつく。


 小首を傾げる彼女は四つん這いで弓なりに背中をしならせお尻を突き上げる、所謂で……視線は吸い込まれるように後方で僅かに揺れるその――


『ひゃわっ!?』


 僕の視線に気付いた彼女が真っ赤な顔でペタンと座り直しジト目で睨んできた。


『エッチ……』

「ごめんなさいっ!」


 言葉は解らずとも今のは「エッチ」か「変態」か「スケベ」の類だというのは解る。しっかり頭を下げて謝罪した。

 顔を上げると少し頬を膨らませているだけで怒っている訳ではないようで安堵した。


 それにしても――


「これはこれでヤバい……」

『? 何か言いましたか?』


 疑われている気がして、黙って首を振る。


 広げて密着させるように押え付けたタオルで主に胸辺りを隠し、もう一枚のタオルは膝掛けのようにに被せている姿は全裸とはまた違ったエロさがあって、正直目のやり場に困る。


 自分の格好の心配より今の現状を把握することに切り替えたようで、真剣な表情で彼女は口を開いた。


『率直に訊きます。あなたは何故召喚魔法を行使したのですか?』


 大切な話なのは判るけど、肝心の訊かれているのか解らない。


 いや、この状況を作ったについてだったら――ん? それしかないような気も……。


 ただ、言葉が通じない可能性が……間違いなく通じない状態でどう伝えればいいのか?


「あ」


 ふと召喚をしていた時に気になっていたこと、


「えーと、……?」


 僕の呪文に被せるように同じ呪文を発した女の子が名乗っていた名前。


 咄嗟に口に出して後悔した。



「ど、どうして……?」


 小さく溢した彼女はそのまま泣き崩れた。

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