15.魔王様とドンキドンキ編愛めし
パーティーだというのに、一行はメガドンキが誇る巨大な惣菜コーナーで足を止める。
そう、これぞドンキホーテと言うとんでもないラインナップの惣菜達が出迎えてくれる。スーパーでは中々お目にかかれない。
日本の食事に少しばかり慣れた魔王様ですら立ち止まり、固まってしまう物に目が行った。まだ日本に来て日が浅いドロテアは何がおかしいのかあまり分かっていないが、思いのまま寿司というワンパクすぎるネタのお寿司。
ソーセージ、ミートボール、豚肉、ハンバーグ、マヨコーン。魚のネタ一切無しにする事で価格も大量に入って九百円。
「おぉ……実に強そうな寿司であるな」
そしてラインナップがお子様が大好きな物ばかり。
「うまそうじゃの!」
ドロテアはそれを見て魔王様とは違い素直な意見を述べた。しかし、これこそがドンキホーテの所以、誰かの75%より一人の120%というとんでもない思想がこの店舗にはあるのだ。
「お嬢はこれ食べたいのかぁい? まぁビールには合いそうだねぇ」
「量も沢山あるあるしのぉ、烏子。妾はこれを入れようと思うのだが、良いか? 美味い物しか入っておらぬ。きっと満足じゃろう!」
もし、これが食べ放題のブッフェなんかであれば子供のお腹を満たし、お店側は他の高い食材を食べられずに大きな儲けが出るところだろう。
「美味しそうだね? ドロテアちゃん」
「そうじゃろう! そうじゃろぉう! 飛鳥は話が分かるのぉ!」
お子様の好きな物だけを盛り込んだ。ドンキホーテクオリティー、そこにはかつての大人が忘れてしまった物があるようだ。
「ドンキホーテじゃないとこのお寿司は売ってないねぇ」
かつて、両親がまだ健在だった頃、烏子は回転寿司でこういったお寿司を食べた事があった。
「烏子よ。何やら嬉しそうであるな? クハハハハ!」
どうやら自分が懐かしんでいた事を見破られたらしい。
「いやぁ、ドンキホーテに来ると童心にかえるんだよねぇ」
そう言って烏子も一つ、自分用のおつまみを選んでカートに入れた。
「“フライドチキンの皮でビールが飲みたい!という皮好きに捧げる鶏とスパイスの旨味が凝縮された皮だけのフライドチキン“ であるか? クハハハ! 長い!」
セリフではない。ドンキホーテのこのぶっ飛んだ商品名。
「飛鳥も何か食べるぅ! どれにしようかなぁ」
どうしてこんな商品名の物のOKが出るのか、謎は深まるばかりである。
「“喫茶店のあのあんバタートーストを片手で思う存分頬張りたい。パンにはさめる限界までつめこんだあんこMAXサンド“ほぉ、うまそうじゃな!」
改めて言うがセリフではない、商品名である。
「二つあるからドロテアちゃん、半分こしようね? 魔王様も半分こしようね!」
餡子は魔王様もドロテアも飛鳥も大好き。
「クハハハハハハ! 良い! 名前が長すぎる事以外には百点であるな! スーパーでは売っておらぬワンパクさである!」
「いや、ほんと凄いよねぇ。もう全力全開の夜勤明けテンションで考えたんかねぇ?」
一昔前にありそうなラノベタイトル並みに全てを説明している商品名。
「この食い物達からは並々ならぬ野望と執念を感じるのぉ。妾が新魔法を開発した時と同じ、これを考えた者共は相当な剛の者じゃな。妾には分かる」
「あぁ、かもしれないねぇ、アルバイト一人でも商品決定権あるらしいからねぇ」
犬神家がカートに入れた商品はまだ氷山の一角、まだまだとんでもないネーミングの商品が並んでいる。
その中でも特徴的な物を烏子は手に持って商品眺める。
「“焼き鳥にはなんでシビ辛がないの?焼き鳥屋で大量の七味や一味 山椒をかけ続けた辛党開発者の不満がついに爆発手加減なしの鬼盛り花椒&唐辛子 覚醒シビれ焼き鳥“もう何が言いたいのか分からないけどぉ、買いだねぇ! どうせだから明日の朝ごはんも買っておこうかぁ?」
と言っておにぎりを一つ手に取ってみるとそのおにぎりもやっぱりぶっ飛んでいた。“具がない部分” が許せないシリーズ! はみだしすぎィな爆盛りにんにくチキンステーキおにぎり“おにぎりという概念を完全に逸脱した具がはみ出したおにぎりである必要があるのか、いや……ドンキホーテだからこれがおにぎりなんだろうと何故か納得してしまうのもこのお店ならではといえよう。お弁当にお惣菜と随分カートが一杯になってきた。
ドロテアの歓迎会に必要な食料はこれで十分だろう。となれば次はパーティーでの催しに使う玩具なんかを見に行くのが自然な流れ、玩具売り場のある上のフロアへと向かうエレベーターに四人は向かった。
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